“海外でも人気爆発”のはずが…なぜ「アニメの制作中止」が起きるのか? クラファンで資金集めも“制作費が倍増”で頓挫する例
今や、日本のアニメは重要な輸出品目として熱視線を浴びている。10月30日に日本動画協会が発表したデータによると、2024年の日本のアニメ市場は前年比約15%増の3兆8407億円で、過去最大になったという。
【写真】疲弊する制作現場とは裏腹に盛り上がり続ける「アニメグッズ売り場」「聖地」「アニメファンが集まる駅」
そして、昨今増えているのが、アニメやゲームの制作、漫画のファンイベントを開催する目的で行われるクラウドファンディングだ。クラウドファンディングといえば、中小企業やNPOなどが企画を行う際の資金集めの手段としてお馴染みである。豪華な返礼品を武器に、数百万、数千万円の資金を集めることに成功した事例もある。
ところが、「こうしたクラウドファンディングに、暗雲が立ち込めている」とアニメ業界に詳しい編集者のJ氏が打ち明ける。物価高や人件費高騰の影響で、資金を集めておきながら頓挫しそうな事案が出始めているのだという。【文・取材=山内貴範】(全2回のうち第2回)
制作費がどんどん上がっている
人件費や材料費の高騰で、首都圏の駅前の再開発が中断するというニュースはたびたび報じられている通りだ。こうした経済状況が、コンテンツビジネスの世界にも影響を及ぼしている。J氏は、現在、アニメやゲームを制作する目的でクラウドファンディングを安易に行うことは「極めて危ない」と警鐘を鳴らす。
「ただでさえ物価や人件費が月単位でどんどん上がっている状況なのに、追い打ちをかけるようにアニメーターの人材難が深刻で、どこのスタジオも予定がパンパンに詰まっています。アニメ1本を完成させるためには、クラウドファンディングを始めた頃に想定していた制作費の2倍、3倍の資金が必要になってしまう例も少なくありません。
クラウドファンディングだけではなく、従来通りのスポンサーから資金を集めて制作するアニメも、やはり制作費が当初の想定より高騰してしまい、計画が狂い始めているケースがみられるようです。今後、水面下で頓挫する例は相次ぐでしょうし、発表されたタイトルがいつまで経っても完成しないトラブルも顕在化するのではないでしょうか」
様々な企業がアニメ制作に乗り出しているのは、テレビドラマや実写映画と比べると“コスパがいい”ためだといわれる。確かに、資金さえ集めれば、あとはスタジオに丸投げすれば作品が完成するのだ。“第二の鬼滅”を狙って多くの企業がアニメの制作に乗り出しているが、J氏によると、「今後は資金難から制作本数が減少する可能性も大いにある」そうである。
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