“海外でも人気爆発”のはずが…なぜ「アニメの制作中止」が起きるのか? クラファンで資金集めも“制作費が倍増”で頓挫する例

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オタク相手に進む信者ビジネス

 ファン心をくすぐる限定商品が並ぶクラウドファンディングは、支援とは名ばかりで、実際は“高額な通販”である。こうした企画を乱発する公式側の姿勢にも問題があると、H氏は話す。

「限定品を手に入れたくなるファンの心理を利用し、公式がとにかく煽っているのが問題だと思いますね。もちろん、我々中古市場はそういった人たちのおかげで潤っているので文句は言えないのですが、次々にお金を出させられるファンはたまったものではないんじゃないかと思います。

 現在のオタク市場は完全な商業主義社会。推し活を行っている人たちは自覚がないと思いますが、高額なグッズに金を注ぎ込ませるのはキャバクラのようだし、宗教ビジネスに近い部分があると思う。そして、ファンも公式に乗っかって“ファンならお金を出すべきだ”などと煽ったりする。物凄く良くできた集金システムだと思います」

 J氏も、ありとあらゆる手段を使ってファンから“集金”を行う、過度な商業主義化が進むコンテンツビジネスのあり方に問題があると話す。

「今や、アニメが手っ取り早い集金の手段になっていて、作品に愛のない人によって食い物にされつつある。同じ絵をプリントしただけのグッズが量産され、ファンを飽きさせないために、次から次へとイベントやグッズを投入する。コンテンツの勢いがあるうちに、ファンから金を毟り取ろうという感覚が凄いんですよ」

 こういったビジネスは、“推し活”が盛んに煽られている今だから何とかなっているようだ。けれども、いつか限界が来る気がしてならない。公式側が一方的に利益を追求するのではなく、ファンに還元していく姿勢を示さなければ、見限られてしまう可能性も高いのではないだろうか。

 第1回【未経験の主婦に「原画」の依頼が舞い込む異常事態…日本アニメが大人気のウラで「制作現場がもはやパンク状態」「若手を育成するヒマもない」】では、人気ジャンルであるはずのアニメの制作現場が、人手不足に陥っている現状や、そうなってしまった原因などについて取材し、深掘りしている。

ライター・山内貴範

デイリー新潮編集部

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