「おれ、思わずムラムラしちゃったよ」…埼玉「一家四人殺害事件」犯人の“異常な欲望” 兄の家族を襲った犯人が“義姉を最初に殺害”した理由

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密室の攻防

 場面は連載第1回の冒頭に戻る。

「これから話を聞くけど、言いたくなければ何も言わなくてもいい」

 と告げた後、捜査員たちはTを問いただした。

「なんで、俺たちが四人も来たか、わかっているよな?」

「思っていることを全部、話しちゃえよ」

 何を聞いてもTはうつむいて黙っている。額から噴き出す汗を拭おうともしない。

「Tの人生は、刑務所とシャバの往復を繰り返しています。やったことの重大性から、死刑になることは熟知しており、ここであっさり罪を認めれば逮捕されることも分かっています。何より、異常な犯罪を平然とやってのけているだけに、“どうしてあんなことをしたんだ。被害者に申し訳ないと思わないのか”という、通常の理詰めの捜査は通用しないと、捜査員は考えたのです」(同・記者)

 意を決した、一人の捜査員が静かに言った。

「なあTちゃん、義姉さんは色白でムッチリだな」

 Tの口元に下卑た笑みが浮かんだ。その変化を、他の捜査員も見逃さなかった。

「Tちゃんよ、ボインでよかったんべ?」

 Tはようやく顔を上げ、笑みを浮かべながら言った。

「そうだよ。おれ、思わずムラムラしちゃったよ」

〈蕨署捜査本部は二十六日夜、実弟を東京都大田区西蒲田の簡易旅館前で殺人の疑いで緊急逮捕した。(略)自供によると、犯行の動機は(Tが)五月二十六日青森刑務所を出てきてから、(Bさんと)関係をもとうと(Aさん宅を)二回訪れたが、冷たくあしらわれたため、八日夜、今夜こそ目的を果たそうとマキ割りを持って訪れ、四人を殺害したうえ(Bさんに)乱暴した〉(朝日新聞 昭和45年8月27日付)

動機はあとから

 まず、四人の殺害手順や詳細を聴取したが、Tは最初にBさんを殺害していた。その理由は、こうである。

「ほかの人間を殺しているうちに逃げられたら、あとでやれなくなる」

 さらに犯行後、現場に戻り、Bさんの太ももを切り取り、食べようと思っていたことなども自供した。刑務所に収監中、出所したらきれいな女性を殺して太ももを食べることを考えていたという。そのため、出所後に実家に立ち寄り、マサカリを盗み出していたのだった。

 Tと捜査員たちは蒲田からタクシーに乗り、捜査本部のある蕨署を目指した。首都高速に入ったところで、Tは意外な事実を打ち明ける。それは「(今日)逮捕されなければ、3日後に狙いをつけていた戸田の民家を襲うつもりだった」というものだった。

「異常者による犯行に対する取り調べで大切なことは、“動機は一番、最後に聞くこと”だと言います。あたまから“どうしてこんなことをしたんだ”と詰問しても、なかなか口を割りません。同じ埼玉県警が手掛けた連続幼女誘拐殺人犯の宮崎勤死刑囚も、動機について調べが及んだのは最終段階だったそうです」(前出・記者)

 昭和46年7月17日、浦和地裁(当時)の判決公判で「被告は生来の異常性格者であるが、犯行時の心神耗弱は認められない。犯行は極めて残虐で、もはや懲役刑では改善の余地がない」として死刑判決を受け、確定。その後、執行された。

*杉田高光著『捜査一課の犯罪日誌』(東京法経学院出版)から一部を参考にしています。

【第1回は「埼玉『戸田一家四人殺害事件』…マサカリで被害者をメッタ打ちにした犯人の“意外すぎる正体”」捜査員も絶句した壮絶な事件現場とは……】

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