埼玉「戸田一家四人惨殺事件」…マサカリで被害者をメッタ打ちにした犯人の“意外すぎる正体”

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浮かび上がる容疑者

「初動捜査で得られた基礎情報を検討した結果、捜査本部では容疑者は1本(単独犯)であると判断しました。また、現場は最寄りの駅からは離れた住宅地であることから土地カンがあり、被害者の実家から凶器を持ち出していることから、被害者と何らかの関係がある敷カンもある。また、Bさんの体内に残された体液の鑑定から、容疑者はB型。死後に暴行していることから、異常性格の持ち主である可能性が高いと判断し、所要の捜査方針を立てたのです」(前出・記者)

 そこで、地元の変質者、素行不良者、過去に同種犯罪の前歴のある者などがリストアップされ、つぶしの捜査が行われたが、捜査線上に有力容疑者が浮上してこなかった。一方、被害者関係の捜査では、家族や親せき縁者などが再捜査された。対象者にとっては気分のいいものではないが、重要凶悪事件ともなれば、警察はどこまでも調べなければならない。

 この家族捜査の過程で、Aさんの実家から新品のトランジスタラジオ1台が無くなっていたことが分かった。保証書があり、製造番号が判明した。すぐに近隣はもちろん、東京、千葉、神奈川各県の質屋へ捜査員が飛んだが、質入れされた形跡はなかった。

 そんな中、家族の中で唯一、連絡が取れなくなっているのがAさんの弟、Tだった。

 Tは空き巣、かっぱらい、干物盗、自転車盗などの犯歴があり、最後の逮捕は事件の二年前、昭和43年7月13日、自転車を盗んだことで警視庁浅草署に逮捕され、青森刑務所に収監された。事件の2カ月半ほど前の45年5月26日に出所したが、その後の足取りがわかっていない。Tが盗みの常習であることは犯歴から明白だが、実の兄(Aさん)の家族全員をマサカリで惨殺し、義姉(Bさん)にあんな無残なことまでするのかどうか……。

「自転車泥棒とか下着泥棒のような単純な窃盗しかやりません。殺しなんて大きな事件はできないと思います」

 かつてTを取り調べたことがあり、捜査本部に詰めていた蕨署の巡査長は、捜査会議でこう述べた。

「しかし、その後の捜査で、Tは出所後の6月、東京・吉原に出向いて店の女性の下腹部にかみついていたことが分かりました。また、何度も女性の下着を盗んでいること、さらに被害者家族と一緒に実家に住んでいた頃に夜中にBさんの布団に潜り込もうとしたことが判明します。累犯前科者から有力容疑者が浮かばないので、Tに捜査が集中するのは時間の問題でした」(前出・記者)

 実家に寄り付かないのであれば、簡易旅館を転々として、東京都内で働いているのではないか――捜査の主力は当時、360軒もの簡易旅館があり、1万2000人の労働者が泊まっていると言われた東京・山谷地区に向けられた。
 
 埼玉県警の捜査員が驚いたのは、山谷地区を管轄する警視庁捜査員の姿だった。白のダボシャツに雪駄履き、作業着に地下足袋と、制服やスーツではなく、完全に地域に溶け込んでいる。埼玉県警の捜査員も同様に、髭もそらず作業着を着て、Tの顔写真を懐に、聞き込みや検索を進めた。

 だが、Tの姿はなかった――。

【第2回は「『おれ、思わずムラムラしちゃったよ』…埼玉『一家四人殺害事件』犯人の“異常な欲望” 兄の家族を襲った犯人が“義姉を最初に殺害”した理由」取り調べで判明した想像を絶する事実とは?】

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