名古屋主婦殺人、容疑者が同窓会で見せていた“ある変化” 「憎しみと愛着という相反する感情が、ストーカー行為に…」

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【前後編の後編/前編からの続き】

 26年にわたって未解決だった殺人事件の容疑者がついに捕まった。逮捕された安福久美子(69)はこの間、犯行現場からも近い名古屋市内の一角で息をひそめて暮らしていた。自ら出頭し、取り調べにも素直に応じているものの、いまも殺害した動機は謎のままだ……。

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 前編【「いつも奥さんは人目を避けるように…」 名古屋主婦殺人、容疑者の近隣住民が抱いていた“違和感”】では、26年前に殺害された奈美子さん(32=当時=)の夫・高羽(たかば)悟さん(69)や、安福久美子容疑者の近隣住民の証言を紹介した。

 高校卒業後、悟さんは愛知県豊橋市内の大学に進学するが、思わぬ形で安福容疑者と再会することになる。

「私は大学に入ってもテニスを続けていたのですが、ある日、大学のテニスコートに彼女が現われ、何時間も私を待っていたことがありました。名古屋から豊橋までは電車で2時間近くかかるため、このまま帰すのも気がとがめ、とりあえず近くの喫茶店に一緒に入ることにした。確か、その場で“こういうことをされると困るんだ”と言うと、彼女が突然泣き出して困り果てました」(悟さん)

「明るい様子だったので安心」

 安福容疑者も県内の別の大学に通い、テニス部に入っていたというが、

「待ち伏せをされた日以外にも、テニスの大会で、彼女が友達を連れて私を応援していたことがありました。まさか犯人だなんて思わなかったので、好意を寄せられていたことを警察には話していませんでした」(悟さん)

 社会人になってから接点は途絶えたが、事件の5カ月前、高校ソフトテニス部の同窓会が開かれた。

「高校近くの店でランチを取った後、皆で懐かしのテニスコートまで歩きました。その途中、彼女が私のそばにやって来て、“私、いまは結婚して、仕事もバリバリやって、家事もしてるから大変なの”と話しかけてきたのです。学生時代の暗い印象とは打って変わり、とても明るい様子だったので、驚くと同時に安心したのを覚えています」(同)

 悟さんは転居後も、現場保存のためにこれまで私費で2200万円以上を投じて、惨劇の舞台となったアパートを借り続けてきた。

 しかし安福容疑者がどうやって、当時の自宅住所を突き止めたのかは不明という。

「彼女と奈美子に面識はなかったはずです。なぜ奈美子を狙ったのか。家内を殺されるほど、私は何かひどいことをしたのかと問わずにはいられません」(同)

「憎しみと愛着という相反する感情を抱き……」

 凶行の背景について、精神科医の片田珠美氏は、

「安福容疑者のように、周囲から“おとなしい”と評価される人は、自己主張などをしない反面、内側で感情や衝動を抑圧しているケースが少なくありません。高校時代に2度もバレンタインチョコを渡すなど、彼女の恋心は本物だったと思われます。しかし大学生になって数時間も待ち伏せするなど、異様な執着へと変質している点に注目します」

 精神分析の世界で「アンビバレント(両価的)」と呼ばれる感情が見え隠れするという。

「拒絶されたと感じて憎しみと愛着という相反する感情を抱き、ストーカー行為などへ転じる事例は存在します。そういった感情は一度、心の内に宿ると消し去るのは容易ではありません。事件の少し前に悟さんと再会したことで、心の奥にしまいこんでいた情動が一気に噴き出したのではないか。そして、その矛先は本人でなく、彼が最も大切にしている存在へと向けられた可能性があります」(同)

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