「からあげライター」に「家電プロレビュアー」 中川淳一郎が分析する肩書“超細分化”の時代
Yahoo!ニュースを見て、ふと目に留まったのが「からあげライター・松本壮平」の名前。記事タイトルは「1個が約80g!? 『かん』で数えるジャンボサイズの唐揚げ&竜田揚げを食べてきた」で、多数の写真と共に唐揚げ定食を実食する様子のレポートです。
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こりゃスゴい!
同氏は唐揚げの聖地・大分県中津市出身。Yahoo!に寄稿した記事42本のうち40本が唐揚げ、2本は鶏の素揚げに関するものでした。
元来、執筆者の肩書といえば「ライター」「コラムニスト」「ノンフィクション作家」「ジャーナリスト」が一般的で、少し専門的になると「モータージャーナリスト」「ファッションライター」などがありました。
しかし、今や「からあげライター」ですよ! 他にも「日常グルメライター」「愛知の爆食グルメライター」「家電プロレビュアー」「女子目線温泉ライター」などが見られます。
細分化された分野を探求することにより、その道の第一人者になり仕事が得られる時代です。思えば私も2006年に「ネットニュース編集者」を名乗ったところ、ニュースサイト立ち上げの仕事やらネット界隈の事件解説やらの仕事が次々と。ただの「ライター」よりも打ち出しが明確でニーズにフィットできるため、こうした名乗り方は今後もやむことがないでしょう。
この肩書について、面白いのが新聞の投書欄です。今では肩書を載せない新聞もありますが、自然なのは「会社員」「農業」「高校3年生」などです。定年退職したであろう人々は「元会社役員」「元公務員」などと書き、かたくなに「無職」を避ける傾向があると見受けます。「郷土史研究家」「街づくりアドバイザー」も目にしました。趣味だろうと肩書にすることはできるわけで、「プラモデル愛好家」「ハゼ釣り名人」なんかでもいいかもしれません。
企業ではCEOが日本に定着して以降、CMOやCFOも登場しました。ある人と名刺交換した際に「CMO」とあったので「マーケティングの責任者をおやりなんですね」と言ったら「モノづくりのMです」なんて返されたことも。
このように肩書には個人のアイデンティティーを示す役割があり、各人のこだわりがうかがえますが、時に悲哀を感じるケースもあります。
某広告会社の男性が若手営業マンだった時分は「AE」。つまりアカウント・エグゼクティブで、30代中盤に「AEディレクター」になりました。両方ともヒラです。50歳目前の同氏に名刺をもらうと「シニアエグゼクティブAEディレクター」でした。オッ、ついに部長ですかと聞きますと、
「いや、年取って出世の目がなくなると、こうなるんだよ」
その時、私としては「あぁ~、だったらオレも『シニアエグゼクティブエディター・ハイパーメディアライター』を名乗らなくてはいけませんね」と彼に合わせるしかありませんでした。
さて「ネットニュース・ウェブメディア編集者」は、もはや一般的です。ならば私は今後、どう名乗ればいいのか。せいぜい思い付くのが「隠居ライター」「スーパーファミコン熱中ライター」ぐらい。こりゃ仕事は呼び込めそうにないです。
残りの人生、困りました。


