「移植1回で約450万」「数千万円かけても妊娠しない」 それでも「卵子提供」で“台湾”に渡る夫婦が後を絶たない深刻な理由
数千万円かけても妊娠できず…
十年以上台湾に通って数千万というお金を使ってそれでも妊娠できず、もうお金がないから渡航できないという方たちをこれまで何人も見てきました。新法案でようやく光が見えたと思ったのですが、今回の廃案を受けて国政が信じられない思いです。
このままではいけないと今年7月に有志の5人の医師で「CREMED(医療としての卵子提供を推進する生殖医療専門医の会)」という団体を立ち上げました。セントマザー産婦人科医院(福岡県北九州市)・田中温、英ウィメンズクリニック(兵庫県神戸市)・塩谷雅英先生、ローズレディースクリニック(東京都世田谷区)・石塚文平先生、京野アートクリニック高輪(東京都港区)・京野廣一先生、広島HARTクリニック(広島県広島市)・向田哲規先生の5名です。CREMEDでは、加盟するクリニックごとに卵子提供を募り、倫理委員会の厳しい審査のもと、ドナーと提供を受ける方のマッチングを目指します。団体の指針として、卵子ドナーの情報は個人が特定できない範囲で最大限開示すること、日本では卵子ドナーを連れてくることが現実的に難しいことから30万円程度の補償をドナーに対価として支払うことを定めています。
CREMEDの最終目標は廃案になった「特定生殖補助医療法案」の制定です。今回の廃案をめぐって新法案は出自を知る権利を害するという批判が上がりました。もちろん我々も出自を知る権利の重要性は理解していますし、CREMEDでも卵子提供で生まれたことを伝える「テリング(告知)」を義務付けて最大限の情報開示は行います。
しかし、卵子ドナー個人が特定される制度では卵子提供が進まないことは前述の通りです。卵子ドナーも子どもが生まれた直後は情報開示に協力的かもしれませんが、10数年が経ち、子どもが分別つく年齢になったときには考えが変わっていることもあります。ドナーの居場所が分からない可能性もあり、もし分かっても会ってくれないかもしれません。情報開示を求めるのであれば、こうした状況が子どもたちに与えるショックも考えなければいけません。
CREMEDでは、原則卵子提供者は匿名、お子さんへのテリングを早いうちから説明するカウンセリング体制をもちます。お子さんがどうしても卵子提供した方に会いたいという場合には、卵子提供者に報告し、同意された場合には対面を、さらに間接的でも会っていただける方への協力をお勧めしております。来年度より卵子提供を開始する予定です。いずれにしても、卵子提供を受ける方はある程度年齢を重ねていることが多く「待ったなし」。少しでも日本で卵子提供が進むよう、活動を続けてまいります。
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