不倫の子を堂々と育てた母と、いつもビクビクするその息子…「僕はヘタレなんですよね」 55歳男性が“日和って逃げた”人生の2つの後悔
恋人から「逃げた」学生時代
そう決めたはずなのに、学生時代につきあいかけた彼女との関係を断ちたいと思ったとき、彼は逃げた。何度かデートして深い関係になったものの、あっけなく彼女への興味をなくした。それなのにそのまま“恋人”としてつきあうことはできなかった。だから彼女に、「もう会わない」と言ったらいきなり激怒され、待ち伏せされたりアパートへ来られたりして怖くなったのだという。
「あのときはまだ恋愛というものを知らなかったから……。ただ、別れの告げ方が悪かったですね。相手の気持ちを考えようとしなかった」
誰にとって「真っ正直」なのかを考えてしまったと彼は言う。自分の気持ちに正直でありたかった。それが相手を傷つけた。だったら嘘を言えばよかったのか。考え続けた結果、相手の気持ちを考えながら自分に正直に生きるしかないという結論に達したようだ。自分に正直に生きれば、確かに人を意図せず傷つけてしまうことはあるのかもしれない。
彼自身は「こういう人間になりたい」という理想があって、それに向かって生きているつもりなのに、何度も「自分自身に裏切られた」と言う。
“日和った”就職先えらび
大学に進み、就活が始まったときも彼はかなり情緒不安定に陥ったという。
「僕、本当は新聞記者になりたかったんですよ。子どものころから憧れていた。でも学生時代に、どうやらそういうタイプではないなと思って。真実を追い続けるのはかっこいいけど、実際、自分にそういう覚悟があるのかと問うてみたら怯んでしまった。結局、ある程度、名前の知れている会社に就職できればそれでいいと日和りました。就活は本当に疲れた。いっそやめちゃおうかと思ったくらい。自分をPRすることじたいが苦手なんですよね。たかだが22年間の人生で、そんなに売り込むようなことをしてきたわけでもない、自信もない。生き生きと自分がやってきたことを話す他の学生を見ながら、僕は気持ちがどんどん冷えていきました」
前向きにやる気を見せなければいけない。若さは希望だ。元気に貪欲にと煽られる就活は、もしかしたら苦手な人が多いかもしれない。それでもみんながんばるのだ。生きていく糧を得るために。
「誰もが知っているような有名企業ではないけど、そこそこの会社に就職できたとき、自分はやっぱり“人の目”を気にしていたんだなと思った。本当はもう一社、行きたい会社があったんです。社長や役員もいい人で、この人たちのもとならがんばっていけるかもと思った。でも会社として名前がなかった。それでまたまた日和った。自分の直感より、他人からの評価が気になる人間なんです」
そこそこの有名企業に就職したものの、「なんとなく後悔ばかりする日々」だったという。本当はあっちの会社に行きたかった。その未練が、自分を腐らせていったと彼は言う。
「覚悟がないんですよね、いろいろなことに。若いころは人生、後悔ばかりでしたね。それでも就職したのだから、なんとか踏ん張ったつもりなんです」
[2/3ページ]

