「クマ除けスプレーにも怯むことなく襲い掛かってきた」…秋田県では過去最悪の「死者2人」 地元県議が明かす「クマによる人身被害」の息を呑む実態

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 秋田県の“クマ問題”が深刻な状況だ。2025年度のクマによる県内の人身被害は、10月26日現在で54人に達し、うち2人が死亡している(全国では10人)。秋田県民は長くクマと共生してきた歴史があるが、近年はスーパーマーケットや公園、バス停付近にまでクマが出没。人間の生活域にクマが進出する異常事態になっている。

 事態を重く見た秋田県の鈴木健太知事は、10月27日、防衛省に対して自衛隊の派遣を要望した。その理由として、現場でクマ対策に当たっている職員だけでは、既に対応が限界に達している現状が挙げられる。自衛隊はクマを捕獲する箱罠の設置など、様々な支援を行うと報じられている。

 デイリー新潮ではこれまでも秋田県のクマ問題について取材してきたが、県内から聞かれるのは、「近年、クマが人に慣れて、怖がらなくなっている」という話である。それゆえ、従来のクマ対策の抜本的な見直しが必要、という議論もなされているようだ。

 これからのクマ対策はどのようにすべきなのか。実際に知人がクマに襲われ、現地でクマ問題の解決に向けて意見交換を重ねている、秋田県議会議員の住谷達氏に話を聞いた。住谷氏は、20日、男性を襲ったクマが約6日間にわたって住宅に立てこもる事件が発生した湯沢市に事務所を置いている。【取材・文=山内貴範】(全2回のうち第1回)

人里にクマが多数出没

――現在、秋田県内で相次いでクマが出没しています。その被害は昨年よりも広がっているのでしょうか。

住谷:確実に広がっています。2023年度の捕獲頭数が2334頭と異常だったので、それよりは多くないものの、10月20日時点で既に1352頭に達しています。昨年度は1年間で409頭でしたから、単純計算で約3倍ですね。

 最終的に、今年は2023年度に続く頭数を捕獲することになるのは、間違いありません。また、被害件数は昨年度が11件だったのに対し、今年度はそれを大幅に上回る54件で、亡くなった人は2人となっています。これは、過去最悪だった2023年度の人身被害者70人に匹敵するペースであり、人的な被害は極めて深刻です。

――湯沢市ではクマが消防本部に侵入したり、住宅に立てこもるなど、どんどん市街地に進出している印象を受けます。

住谷:市街地、人里に出没する件数は確実に増えています。原因の一つとして、今年はクマの餌となるドングリやナラ、ブナの実が不作であったことが指摘されています。一昨年に出没件数が異常に増えた要因も、木の実の不作の影響といわれています。

 昨年は木の実がそれなりに実ったので、出没件数が減りましたが、その間にクマの頭数が増えてしまいました。そして、今年は木の実が不作だったので人里に出てきている状況、というわけです。もちろん、それ以外にも複合的な要因があるとは思いますが……。

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