欧州に行くと日本が最貧国だと実感…高市政権がとるべき「物価高」「外国人」対策の決め手

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物価高対策の一丁目一番地

 では、どうして円はここまで下落してしまったのか。元々のきっかけは2013年4月、第2次安倍晋三内閣によるアベノミクスの「第1の矢」、すなわち「異次元緩和」と呼ばれる大規模な金融緩和だった。これによって、当時は1ドル80円程度だった円相場は急降下したのだが、現在のような異常な水準の円安は、2022年以降に訪れた。

 このころポストコロナのインフレ対策で、FRB(米連邦準備制度理事会)をはじめとする世界中の中央銀行が、かなりの勢いで利上げをしたが、日本銀行だけは低金利政策を少しも改めなかった。こうして、日米や日欧の金利差が一挙に拡大した結果、ヘッジファンドなどによる「円キャリー取引」が活発になったことが、円が暴落した最大の要因だとされる。

 円キャリー取引とは、金利の低い円で資金を調達し、金利が高いドルやユーロの資産に投資する取引のことだ。金利が低いほど、資金を借り入れるときに支払う利息は少なく、そうして安く借りた資金で金利が高い通貨の資産に投資すれば、高い利益が望める。金利が高い国の通貨を買う際には円が売られるので、円安になる、というわけである。

 日本の貿易収支が悪化の一途をたどっているなど、以前よりも円安になりやすい環境にあることも間違いないが、日米の金利差も円安の大きな原因であるからには、その差を縮めることが「物価高対策」の一丁目一番地のはずである。いまの物価高を抑える方法は、それ以外にはないといえる。

 問題は世界に類を見ない規模の国債残高で、2025年末には1,129兆円に上ると見込まれている。それを60年償還のルールに則って毎年返すのだが、これだけ借金があると、金利が1%上昇しただけで、償還費が年間3兆7,000億円も増えてしまう。だから金利を上げにくいのだが、その結果、円安が是正されず、物価高がさらに進むという悪循環を断ち切るためには、少しずつでも金利を上げるしかない。それをしないかぎり、どんな物価高対策も効果が上がるとは考えにくい。

円安是正なくして強い経済はない

 筆者が気になるのは、高市総理がアベノミクスの信奉者で、金融政策では緩和志向が強いということである。市場もそのことを認識しているから、自民党総裁選で高市氏が選ばれると、株価が急上昇するのに反比例して円は下落した。日銀も高市総理に遠慮して、利上げしづらくなったという指摘があるが、本気で「強い経済をつくる」なら、高市総裁には、円安是正に目を向けてもらいたい。

 現に高市総裁が誕生しただけで一気に円安になった状況を憂うることなく、円安是正を視野に置かずに物価高対策を進めるなら、マッチポンプになってしまう。どうして与野党ともに、だれも「円安をなんとかしろ」という声を上げないのだろうか。たとえば、ガソリンの暫定税率廃止論議。原油価格はこのところ下落傾向にあって、日本でガソリン価格が高止まっている理由は、ひとえに円安にある。円高になれば、暫定税率を廃止して税収を減らす必要などないのである。

 円安にメリットがあるとすれば、その代表に猛烈なインバウンド需要が挙げられる。観光庁の2024年訪日外国人消費動向調査(速報)によると、外国人旅行消費額総額は前年より53.4%増の8兆1,395億円になる。もちろん過去最高で、2025年はそれを大きく上回ることが確実視されている。しかし、このインバウンドの黒字は、アメリカの巨大IT企業が提供するデジタルサービスなどに支払われる「デジタル赤字」にすっかり飲み込まれてしまう、という指摘もある。

 また、訪日外国人の急増は、このところ急浮上し、高市政権も力を入れるという「外国人問題」にもつながっている。

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