欧州に行くと日本が最貧国だと実感…高市政権がとるべき「物価高」「外国人」対策の決め手

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OECD加盟38国中25位の賃金

 高市早苗新総理は内閣の最優先課題に「物価高対策」を挙げている。肝心なのは、どういう対策を施すか、であるが、「物価高」への対策が必要だという点に関しては、安全保障やエネルギー等の政策では高市政権と水と油の野党も、異論はないようだ。では、現在の日本の物価高はどの程度の水準なのか。

 総務省が発表した2020年基準の消費者物価指数によると、2025年4月の時点で日本の物価は、2020年の物価を100とすると111.5。つまり、5年前に1,000円で買えたものが1,115円に値上がりした、という計算になる。11.5%の物価上昇率は決して小さくない。しかし、この数字だけを眺めていると、私たちを包囲している物価高の波の途方もない高さが見えなくなってしまう。

 筆者は日本と欧州(とくにイタリア)を行き来しているが、欧州の物価高は現在、日本人には目が飛び出るほどの水準である。現在、1ユーロは史上最高水準の177円前後。これで計算すると、ミラノの地下鉄の初乗りが390円。駅の自販機でコーラを買って390円。カフェでパニーノ(ハムなどが挟まったパン)を食べて1,500円。コーヒー付きのセットにして2,100円。カジュアルな食堂でパスタ1皿の値段が2,800円。レストランで食べれば1皿4,000円。物価の高騰が続く日本とくらべても、概ね2倍の金額である。

 宿泊費はさらに恐ろしい。ローマで定宿にしていた4つ星ホテルは、以前は1泊2万円ぐらいで泊まれたのが、6万円を下らなくなったので3つ星ホテルに宿泊したが、1泊3万9,000円。冷蔵庫もついていない部屋である。フィレンツェでは、2年前に気に入ったホテルに泊まりたかったが、そのときは1泊3万円程度だったのが、8万円を超えていた。ミラノの定宿も、コロナ前には1泊1万円台だったのが、いまは6万円を超え、とても泊まれない。

 というのも、日本人の収入は現在、世界のなかでかなり低いのだ。OECD(経済協力開発機構)が発表している世界の平均年収ランキングの2024年版によると、日本の平均年収は4万1,509ドルで、加盟38カ国中25位。G7のなかではもちろん最低で、OECD加盟諸国全体の平均5万3,416ドルを大きく下回る。ちなみに、第1位はスイスの10万5,184ドルで、ルクセンブルクの7万9,596ドル、アメリカの7万7,460ドルが続く。日本人の収入がここまで低くなった原因は、技術革新が進まなかったこともあるが、円安によって拍車がかかった。円安のせいで、日本人の購買力は著しく低下している。

5年間で価値が3分の2になった円

 なにしろ実質実効為替相場(REER)、すなわち日本の海外に対する購買力の尺度は、現在、半世紀ぶりの安値が続いている。そのことは、既述したように海外に行くと強烈に実感するが、日本国内でも同じことが起きている。いまの日本の物価高は、原因のほとんどが円安である。

 円安の悪影響は、「一部の」輸入品が値上がりする程度だと思っている人もいるが、とんでもない。まず食料に関しては、日本の自給率はカロリーベースで38%(2023年度)にすぎない。ちなみに、この数字はG7のなかで圧倒的に最下位である。また、エネルギー自給率は12.6%(2022年)で、OECD加盟38カ国中37位である。では、自給されている食料には円安の影響がないかというと、そんなことはない。

 たとえば野菜なら、化学肥料原料の輸入率はほぼ100%で、ハウスで育てるには電力が、運搬するにはガソリンが要る。家畜なら飼料の輸入率は75%で、温度管理をするためにも排泄物を処理するためにもかなりの電力を使用する。

 また、通信やコンピューターにからんだサービスは、私たちはほぼ海外の企業のものを利用している。それこそユーチューブにせよ、ネットフリックスにせよ、アマゾン・プライムにせよ、価格決定権はすべて海外企業にある。マイクロソフト社のウインドウズなどソフト端末も同様で、それらは個人による使用だけでなく、民間企業から政府の共通クラウド基盤にまでおよんでいる。

 上に挙げたのは一例で、日本は世界でも珍しいほど全方位的に輸入に頼っている国なので、円安が進んだ分だけ物価高が避けられない。10月24日現在、概算で1ドル152円、1ユーロ177円だが、2020年末には1ドル102円、1ユーロ125円だった。つまり、5年間でドルは5割近く、ユーロも4割以上高くなり、円の価値はほぼ3分の2になってしまった。日本は物資やサービスに関して全方位的に輸入に頼っており、それらが4割も5割も高くなっている以上、激しい物価高から逃れられない。

 だから、高市内閣が最優先課題に挙げる「物価高対策」とは、円安対策以外にないはずである。

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