「一般客を装い、売上データを…」 リカちゃん人形のタカラトミーで発生した組織的不正
【全2回(前編/後編)の前編】
「リカちゃん」も、さぞ悲しんでいるに違いない。創業100年を超す国内屈指の玩具メーカー「タカラトミー」で、長年にわたり不正が横行し、発覚後も一切の公表がなされてこなかった。小売店に対する「詐欺行為」と、それに続く「隠蔽(いんぺい)」は、いかにして生じたのか。
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東京都葛飾区に本社を置くタカラトミーは、国民的玩具である「リカちゃん人形」「トミカ」「黒ひげ危機一発」などで知られる。現在の同社は、2006年にトミー(存続会社。1924年創業)とタカラ(53年創業)が合併して誕生。昨年6月には、トミー創業家3代目である富山(とみやま)幹太郎名誉会長の長男・彰夫氏(41)が社長に就いている。全国紙経済部記者が言う。
「8月上旬に発表された25年4~6月期の連結決算では、売上高は前年同期比11%増の594億7900万円、純利益が35%増の33億9200万円となりました。今年で発売55周年を迎えたトミカや『プラレール』など、主力商品が数字を後押ししています」
業績は順調。さる9月には、こんな出来事もあった。
「トミカを走らせて遊ぶ立体構造の『グランドモールトミカビル(トミカ55周年記念特別仕様)』が、7月19日に発売されました。ところが、この玩具で子どもが指を挟んでしまう事故が相次いだのです。これを受けてタカラトミーは9月8日、約4万個を自主回収すると発表しています」(同)
商品を返却した顧客には、個別に会社から連絡があったというのだが、
「購買者の元には、実際に玩具で遊ぶであろう子どもたちに語りかける口調で、富山社長がおわびをする手紙が添えられていました。この文面がXで拡散されると16万以上の“いいね”がつき、“誠実な対応”などと称賛の声が寄せられたのです」(同)
一般客を装い……
トラブルに際し、危機管理のお手本となる姿勢を示したわけだが、その一方で同社は、あろうことか6年にわたって「組織的詐欺行為」に手を染めてきたというのだ。
同社のさる関係者が明かす。
「3月19日、社内で役員や管理職を対象に、富山社長の説明会が開かれました。内容は、弊社商品を試験的に販売する『テストセール』を導入している小売店において、従業員が継続的に不正行為を働いていた件についてです。この事案は昨年12月、当の小売店からの指摘で発覚したものでした」
その小売店は、テストセールでの商品の売れ行きによって、以降の定番採用や購入を判断していた。ところが、タカラトミーの社員が自ら、あるいは業務委託先を活用し、一般客を装ってテスト実施店で商品を購入してきたというのだ。いかに売り上げに“貢献”したとはいえ、これでは「テスト」の意味がない。
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