159人が犠牲、韓国「梨泰院」雑踏事故から3年…日本人女性が目撃した直後の現場 「数分離れたところではまだ踊っている人が」

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狭い場所に人が集まりやすい事情

 ところで、梨泰院という地域の成り立ちは、

「アメリカ軍の駐留文化の街で、17年に米軍基地が大幅に縮小されるまで、米兵がよく出入りしたので、ディスコやバーなどコリアン的ではない店が多い。そこに若者が集まってくる、という地域です」(同)

 外国人も集まりやすいエリアだったわけだが、そのなかで事故が起きた坂道は、どんなところなのか。

「『梨泰院クラス』で有名な通りで、車が1台やっと通れる狭さで、結構急坂でした。私が歩いたときも、酔っ払いとか騒いでいる欧米人を避けるのに必死で、転んだら危ないな、という印象でした」(先のOL)

 狭い場所に人が集まりやすい韓国特有の事情について、元駐韓大使の武藤正敏氏が指摘する。

「韓国の人口は約5200万人で、半分相当の2600万人ほどがソウルと近郊に住んでいます。だからソウルに人が集まるのに、若者が集まる場所が、梨泰院と、弘益大学がある弘大と、延世大学がある新村くらいしかない。人が1カ所に集中しやすいのです」

大きな騒ぎになるのは予想できたはず

 だからといって、対岸の火事とはいえない。リスク管理が専門の東京大学名誉教授、唐木英明氏は、

「群衆のなかでの圧死事故は世界中でまま起こり、日本では01年の明石花火大会歩道橋事故で、11人が亡くなりました。10月にもインドネシアのサッカースタジアムで125人が圧死しましたが、今回は特に規模が大きい」

 と言って、問題点をこう指摘する。

「コロナ禍で人が集まれない状況が長く続いた後、規制が解除されて初めてのハロウィン。若者が大勢繰り出し、大きな騒ぎになるのは予想できたはず。リスク管理ができていれば、と残念です。ドラマで有名になって若者が集まりやすい歓楽街なら、規制当局は注視すべきでしたし、適切な規制をすることは、それほど難しくなかったはずです」

(以上、「週刊新潮」2022年11月10日号「危機一髪の日本人観光客が証言! 韓国『ハロウィン154人圧死』でエネルギー大爆発の真因」より)

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政争の火種にも

 上記の記事で識者が指摘した通り、警備体制の不備は明らかだった。韓国警察は事故後ただちに捜査を開始し、区長や警察幹部ら複数を逮捕。現場を管轄していた警察署長に禁錮3年(業務上過失致死傷)の判決が言い渡されたのは、昨年9月のことである。

 一方で、政争の新たな火種にもなった。野党のやり玉に挙がったのは、当時の尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権で行政安全部長官だった李祥敏(イ・サンミン)氏。尹氏とは高校時代からの友人であり、2024年の非常戒厳令では最側近として重要な役割を果たしたとされる人物だった。

デイリー新潮編集部

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