高学歴でパパ活をする女子大生は本当に多い? 岸谷蘭丸の発言に若者世代もドン引きした理由

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テレビにとって都合が良かった「おバカな2世」 一茂や良純と蘭丸との違いとは

 テレビの歴史において、2世タレントはしばしば「ズレた存在」として愛されてきた。

 例えばコメンテーターとして大活躍の長嶋一茂さんは、その典型だ。自らの浮世離れを逆手に取り、「世間知らずな俺」をキャラとして確立。視聴者も「また変なこと言ってる」と安心して笑える距離感を保ってきた。

 石原良純さんも同様である。専門家として天気を語るより、大声で主張しながらも空回りする「良純節」がむしろテレビ的だった。

 この「おバカキャラの2世」という構造は、タレントと視聴者の間に安全な壁をつくる。

 つまり「この人は分かっていない」という前提がお茶の間にあるからこそ、発言が角を立てないし、炎上しにくい。けれども「上から目線」や「ズレた優等生」になった瞬間、その壁は壊れ、反感が生まれてしまう。

 一方で蘭丸さんは、これまでにない「賢い2世」「新しい若者の代表格」として、メディアに取り上げられてきた。親の名前を隠していた、受験でも挫折を味わったという体験談は「2世の割に地に足が着いている」と評価されていたのではないか。日本での挫折をバネに海外に軸足を移し、起業経験もある若手として、忖度(そんたく)なく日本の古い価値観やシステムに切り込むコメントは、「さすが蘭丸さん」と好意的に受け止められてきたものだ。

 しかし今回の「パパ活やラウンジ勤務をしている女子大生は多い」という発言は、その賢い若者イメージがマイナスに作用する結果となってしまった。彼が接してきたコミュニティー(都内の富裕層、芸能関係者、海外経験者など)での見聞を「世の中一般」に拡張して発言してしまった点、そしてそれを「知見」として堂々と語る態度が問題視されたのである。

 視聴者が反発するのは、そこに「賢さ」よりも「上から目線」を感じるからだ。コメンテーターには、視聴者が生活実感として理解できる視点や、想像力に基づくコメントが求められる。だが蘭丸さんの発言は自分の周囲の限定的な観察に根ざしており、さまざまな人の暮らしを想像する力に欠けている。

 のちに蘭丸さんはXで謝罪したものの、「早慶Gmarch(早稲田・慶應・学習院・明治・青山学院・立教・中央・法政)とかも含めて東京近辺の女の子まじギャラ飲みパパ活夜職増えてる」と重ねて主張していた。ただ「東京」で「早慶Gmarch」クラスに通える学力と経済力を持った、「ギャラ飲みパパ活」で稼げるルックスの女性、というのは日本の中でも相当に上澄みの層であり、全く一般的な女子大生ではない。そもそもわざわざ具体的な大学名を出す必要があったのかとも思う。結局のところ、そういう学力も美貌も兼ね備え、芸能人や2世と夜な夜な交流するような野心的な女性たちとのネットワークを自慢したかったのか、と思われても仕方ないだろう。

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