「慢性的に疲れている人」は43%も… 脳と免疫の長生き健康術

ドクター新潮 ライフ

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「自分は若い」と考えている高齢者は疲労感が低下

 実際、イェール大学の調査研究では、24年にわたって経過観察を行った結果、ポジティブな老齢観を持っている高齢者は、平均で7.5年も寿命が延びることが分かっています。また、カリフォルニア大学バークレー校が行った調査でも、ポジティブな感情、とりわけ畏敬の念を持つと、炎症性サイトカインのレベルが有意に低下すると報告されています。さらにジョンズホプキンス大学の研究者らによる研究では、「自分は若い」と考えている高齢者ほど疲労感が低下する可能性が示唆され、韓国の研究でも、自分は実年齢より若々しいと考えている高齢者ほど脳年齢が若いとされています。

 これらのエビデンスから、ポジティブな感情を持つことが、脳の炎症を抑え、ひいては身体全体の健康をもたらし、老化を防ぐことにつながるといえます。

 脳の炎症のメカニズムについてさらに詳しく見てみます。脳の炎症を抑えるには、脳内の免疫を担うグリア細胞を健全に働かせる必要があります。ちなみに、脳内炎症によるグリア細胞の機能不全が、アルツハイマー型認知症にも深く関与していると近年の研究では報告されています。

「新規」ではなく「新奇」体験を

 さて、グリア細胞の中でも脳内メンテナンスに大きく寄与しているのはアストロサイト(星状膠細胞〈せいじょうこうさいぼう〉)という細胞なのですが、これを活性化する“スイッチ”の役割を果たす神経伝達物質には、ノルアドレナリンやドーパミンがあります。これらの脳内物質の放出を増やす確実な方法の一つに「情動喚起」が挙げられます。言い換えると、ドキドキとワクワクです。そこで私は、アストロサイトを活性化させ、脳細胞の健全性を保つために「新奇体験」をお勧めしています。

 経験したことのないような環境に身を置くことはピンチと感じられるのと同時に、高揚感を伴うことが少なくなく、まさに情動が喚起されます。したがって、「迷ったらとにかく新しいほうを選ぶ」というくらいに、新たなことに挑戦するのが脳の健全性にとって重要であると考えられます。単に新しいという意味の「新規」ではなく、珍しい、特異というニュアンスが含まれる「新奇」な体験に意識的にチャレンジしてみるのです。

 例えば、一人で海外旅行をしてみたり、あえて知らない土地に行き道に迷う“冒険”をしてみたり、また、やったことのないスポーツにチャレンジしたり、なじみの薄いアート鑑賞に挑戦したりする……。このように、脳に新鮮な刺激を与え、ドーパミン放出を促す活動を、私は「ドパ活」と呼んでいます。そしてこのドパ活こそが、脳内炎症を防いでくれると考えています。

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