「久しぶりに脂の乗ったサンマが食べられた」と思いきや…今年の「豊漁はマボロシ」だった 「たまたま群れが沿岸にまとまっていただけ」という驚きの指摘

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専門機関の予報は「不漁」だったが

 秋の味覚・サンマが今シーズンは豊漁で、しかも大ぶり。ようやく不漁を脱したか、とお喜びの向きもあっただろう。ほっそりして味気ないサンマではなく、久々に食べ応えのある旬の味に舌鼓を打った人も多いはずだ。

 ただ、このところ、少々サンマ漁を巡る状況は変わってきた。水産業界を取材する筆者の耳には、北海道の根室漁港などからは「水揚げが減ってきたばかりか、シーズン後半から大型のサンマは影を潜め、再びほっそりスリムなサンマばかりになってきた」といった嘆きの声が届くようになっている。【川本大吾/時事通信社水産部長】

 実は、筆者を含めた水産関係者の間では、シーズン前半のサンマの水揚げ状況はまったく腑に落ちないものだった。なぜなら、本格的な漁期を前に、専門研究機関が発表する今年のサンマの来遊予報は「昨年並みの低水準」(国立研究法人水産研究・開発機構)だったからだ。
 
 サンマは十数年前まで、1シーズン(主に8~12月)の総漁獲量が、おおむね20万~30万トンで推移し、豊漁が続いていたが、2019年に5万トンを割り込むと不漁期に。昨年は約3万9000トンと2年連続で前年実績を上回ったものの、以前の豊漁期に比べれば、かなり低い水準だ。

“昨年並み”なら今年も不漁。獲れても30センチ定規の幅くらいしかない、ほっそり味気ないサンマが1匹300円ほどと、割に合わない旬の味覚かと思われた。だが、漁が始まるとそんな予報とは真逆であった。

8~9月の水揚げは前年の2.4倍

 シーズンの幕開けは、昨年より1カ月以上も早い7月10日。北海道の釧路港で小型船が175キロの「初サンマ」を水揚げ。その後、8月15日には北海道の花咲港(根室市)で、大型船による「新サンマ」173トンが水揚げされた。しかも、比較的ふっくらしていて「今年のサンマは豊漁・大ぶり」と話題になった。

 9月に入ってもその勢いが衰えることはなかった。花咲などの漁港では一時、サンマの水揚げラッシュに対応できず、漁業団体が漁期の漁獲平準化を目的として、各漁船に入港後48時間あるいは24時間休漁する措置を取るほど好調だった。

 漁業情報サービスセンター(JAFIC)によると、今年8~9月のサンマ水揚げ量は、合計約2万8500トンで、前年同期比2.4倍増。このままの勢いで漁獲・水揚げが進めば、「豊漁期へ突入か」といった状況だった。

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