「ふるさと納税」寄附金のうち約5900億円が経費として消えていた! 「富裕層ほど得をする」指摘も
仲介サイトとの蜜月関係
先のデスクが続けて話す。
「総務省は、ふるさと納税の仲介サイト利用者へのポイント付与を今月から禁止とする告示を出しました。サイト運営者の楽天は、告示無効を求め東京地裁に行政訴訟を起こしたのです」
自治体にとっては、楽天をはじめ「ふるなび」「さとふる」などの仲介サイトは、寄附金を集める上で欠かせない存在になっている。
「制度本来の趣旨からすれば、本当に応援したい自治体があるのなら、そこに寄附して心ばかりの返礼品が贈られて済む話です。ところが、現行の制度はどんな返礼品がもらえるかに関心が向けられています。人気の定番は高級和牛、マグロやホタテといった豪華海産物。それらが目当ての人にとって役立つのが仲介サイトで、全国各地の返礼品をジャンル別に網羅して申し込みまでできてしまう。寄附金を1円でも増やしたい自治体にとって、仲介サイトに登録しないと自らの存在をPRできない。だから仲介サイトとは蜜月関係にあります」(同)
約5900億円が経費として消えている?
そこで目下、問題となっているのが手数料である。
「多くの自治体は、複数の仲介サイトに登録して運営側に多額の手数料を支払っています。一方で運営企業は利用者にポイントを付与して自社サイトに誘導している。そのため自治体への手数料が高額になっているとの疑いがあり、総務省も問題視したのです。訴訟を起こした楽天は、あくまでポイントの原資は自前で用意していて、手数料には反映されていないと主張。ポイント付与の継続を求めています」(前出のデスク)
双方言い分はあろうが、もとはといえば公共サービスに使われるはずだった税金である。
「ふるさと納税の寄附金総額は、昨年度だけで1兆2000億円以上にも及びますが、その半分に近い約5901億円が経費として丸ごと消えてしまっているのです」
そう指摘するのは、立命館大学名誉教授(財政学、地方財政論)の平岡和久氏。
「昨年のデータでは、5906億円のうち返礼品の費用が3208億円、仲介サイトなどの事業者への支払いなどの事務費が1676億円、郵送費などが733億円となっています。委託を受けた事業者からすればおいしい儲け話。制度がなければ成り立たなかった仕事が生まれ潤っているわけです。コロナ禍下でも、国や自治体の事業で補助金が出ると中間業者の中抜きが問題となった。その構図と似ています」(同)
「税の再配分」としても非常に非効率だという。
「返礼品で地域の産業、地元の業者にお金が入り地域経済の活性化になるという主張もあるでしょう。とはいえ、本当に過疎に苦しむ地域の経済を立て直したいなら、経費で消えた5901億円を、国が地方交付税などで自治体に再分配し、産業振興を図った方がはるかに効率的です」(同)
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