戦友ハヤタ隊員に感じる俳優の美学… “フジ隊員”が語る「ウルトラの魂」とヒロインの記憶

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宇野千代の言葉に支えられ……

 そうした桜井さんの執筆姿勢を、ある意味で支えたのは、2026年度後期に放送予定のNHK連続テレビ小説「ブラッサム」の主人公のモデル・宇野千代(1897~1996年)の言葉だったという。

「最初の『ウルトラマン青春記』のときは、私の書いた原稿に何カ月もOKが出ず、やめたほうがいいのかなとも思っていたんです。だけど当時の編集長はずっと待っていてくれました。丸谷才一さんの『文章読本』を読んだりもしましたが、ピンと来たのは、宇野千代さんの『行動することが生きることである 生き方についての343の知恵』でした」

 毎日、机に座り、見えるもの、聞こえるもの、心に浮かんだことなどを正確に、できるだけ単純に書く――と説くこの本を読んで、「それなら書ける」と思えたという。

「それならばオーディションを受けた時のことから書き始めればいい、と思えて、書き上げていったところ、編集長からもOKをもらえたんです。その後もこのやり方で行けばいいと続けてきました。というかその書き方しかできないんですけどね(笑)」

映像から記憶を辿り 大原麗子の“代役”も

 前著では、「ウルトラQ」や「ウルトラマン」撮影当時の日記が役に立った面もあったが、今作で取り上げた後の作品の出演時には日記を付けていたわけではなかったという。15作品の映像をすべて見直し、作品内で着用していた衣装やアクセサリーが自前のものであることも多かったため、それらから記憶を辿っていったという。

「各作品の出演話を1本ずつすべて見ました。準レギュラー(のヨシナガ・ユカリ教授役)で出演していた『ウルトラマンマックス』(2005~2006年)だけでも15本ありましたからね」

 自分でも驚いたと言うのは、ゲスト出演した「ミラーマン」(1971~1972年)の第24話。ヒロイン役とは異なり、桜井さんの出演した円谷プロ作品としては、「最初で最後の悪役」となった「インベーダー」として登場した。

「私が覚えていたのは、最初に要人科学者を冷凍銃(コールドガン)で倒すシーンと、最後にインベーダーになって倒れるところぐらいでしたが、見返してみると、結構ずっと出てたなあ、と(苦笑)。小屋に行ったシーンなどは全く覚えていなかったのですが、おそらく撮影がスムーズだったんでしょうね。スムーズにいかないほうが覚えているものですから」

 また、特撮でもヒーローものでもさらにSFでもない作品として円谷プロが手掛けた「独身のスキャット」(1970年)では、大原麗子がヒロインのホステス「あやめ」役として出演したが、スケジュールが多忙なため、大原に代わるホステスの「あやの」役で第3、7、8、9話に登場した。

「満田かずほ(のぎへんに斉)監督には、『麗子ちゃんの穴埋め』と最初から言われました。なんてことだと思いましたけど(笑)、後から分かるよりは最初から言ってくれてよかったです。満田さんらしいですね」

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