戦友ハヤタ隊員に感じる俳優の美学… “フジ隊員”が語る「ウルトラの魂」とヒロインの記憶

エンタメ 芸能

  • ブックマーク

 日本のテレビ特撮ヒーロー作品の黎明期である1966年に「ウルトラQ」の江戸川由利子、「ウルトラマン」のフジ・アキコ隊員を演じた桜井浩子さん(79)が「ヒロインの追憶 ウルトラの絆」(立東舎、2,200円+税)を上梓した。円谷プロダクションの歴史の一部を紐解くとともに、先人から託された「ウルトラの魂」の継承にもかなう作品となっている。

SNSのファンの声がきっかけで

 来年で60周年を迎えるウルトラマンシリーズ。その嚆矢である2つの作品について桜井さんが振り返る機会はこれまでにも数多あり、たとえば2024年に刊行した著述家・青山通氏との共著「『ウルトラQ』『ウルトラマン』全67作撮影秘話 ヒロインの記憶」(アルテスパブリッシング)がそうだった。一方、今回の新著では、それ以外の円谷プロ作品も網羅した。きっかけとなったのは、新型コロナウイルス禍以降、本格的に運用してきたXやFacebookなどのSNSに届くファンの声だったという。

「ここ数年、XやFacebookでの発信を続けてきましたが、『怪奇大作戦などの話も聞きたいです、読みたいです』というファンの声が多かったんです。もともと私自身はQとマンの振り返りで終わりのつもりでいたんですが、『それもそうだな』と思い直しました。ゲスト出演も含めて私が出た作品をピックアップすると結構な数があり、昨年末から執筆をスタートしました」

 今回取り上げた作品は、1966年の「ウルトラマン」の第1話放送の1週前にオンエアされた「ウルトラマン前夜祭」から、Netflixで昨年6月に配信された米国人監督らによるオリジナルCGアニメーション作品で声優として参加した「Ultraman: Rising」まで15作品にもおよぶ。テレビ放送・映画・ネット配信など、視聴形態ですら多岐にわたる数々の作品に携わってきたのは、レジェンドならではだろう。

感情や気持ち、意見を入れ込んだ

 1994年に発行された「ウルトラマン青春記―フジ隊員の929日」から数えて6作目となる今著は、撮影当時の感情や現在の思いを「(爆笑)」「(怒)」「(涙)」などの文字に乗せて、ストレートに表しているのが特徴の一つだ。

「6冊目にもなると、書くのにも慣れたかと言われますが、全くそんなことはなくて(苦笑)。日記の延長のような感じで、感情や気持ち、それに自分の意見なども入れ込んでみました。ラジオ番組の収録で浅草キッドの玉ちゃんさんにお会いしたときも、『SNSっぽくていいですね。桜井さんがこうして話している感じでそのまま読めるから面白いですね』と言ってくださいました」

 SNSで連日欠かさず情報を発信していることが奏功した形となった。

次ページ:宇野千代の言葉に支えられ……

前へ 1 2 3 次へ

[1/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。