ここ数年で「アトピー治療薬」が飛躍的な進化を遂げるも…多くの患者が恩恵を受けられない「驚きの理由」 深刻な“専門医”不足が招く問題の根源とは

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専門医がゼロの自治体も

 アトピー性皮膚炎の患者に新薬が処方されない原因は、第一に「専門医の不足」という。

「アトピー性皮膚炎の患者の多くは、まずは近所の内科のクリニックに行きますが、診療科目に皮膚科を掲げていても専門医不在ということが珍しくありません。こうしたクリニックでは、医師が新薬を理解していないケースが多々あると見られているのです」(医療コンサルタント)

 アレルギー疾患に関する情報を網羅した厚労省の「アレルギーポータル」。ここで都道府県別に皮膚科の専門医を検索すると、栃木県と群馬県は3名、青森県と佐賀県は2名、宮崎県は1名、鳥取県に至っては0。しかも専門医の多くは大学病院と地域の大病院に偏っている。

 アレルギーポータルは日本アレルギー学会が運用し、皮膚科の専門医から成る日本皮膚科学会との連携がない。そのため、国のお墨付きのあるアレルギーポータルで皮膚科の専門医を探しにくいという事情もあるという。

 いずれにせよ、アトピー性皮膚炎の患者数に比べて専門医が不足しているというのだ。

新薬を処方するための「条件」がハードルに

 たとえ画期的な新薬が承認されようと、通院先の医師が新薬を理解していなければ、患者には伝わらない。
 
 中等症以上の患者約1000人を対象にした調査で、「直近5年間に発売された治療薬による全身療養(飲み薬や注射薬)についてよく知っているか?」と聞くと、「そう思う」はわずか2%、「ややそう思う」でも10%だった(日本イーライリリー、25年3月)。

 厚労省が最適な治療法を提示する「診療ガイドライン」(アトピー性皮膚炎)では、21年版で新薬が記載された。次の24年版では記載された新薬が増え、エビデンスレベルAとして、強く推奨された。

 にもかかわらず、内科の医師が新薬を知らず、患者の多くも知らないのだ。

 もう1つ、より問題があると思われるのが、現在の診療報酬制度を前提とした「医師の姿勢」。

 例えば新薬デュピルマブ(注射薬)の処方は、皮膚科診療の臨床経験を5年以上行っている医師がいるなど条件がある。

 街場のクリニックの多くは条件を満たせないため、患者に新薬の処方が適切だと考えれば、大学病院、専門病院等に紹介状(診療情報提供書)を書いて患者を送ることになる。

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