“対極の相手”にフェアな対応 高市早苗新総裁に祝意を示した「辻元清美氏」はスゴい(中川淳一郎)

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 高市早苗氏が自民党総裁選に勝った際、立憲民主党の辻元清美氏がXに投稿した内容を称賛したいです。20代の頃、共に「朝まで生テレビ!」に出演して「対極の二人」と言われていたとのことですが、

〈自民党では初の女性総裁、高市さん、ガラスの天井をひとつ破りましたね。対極の私からも、祝意をお伝えします。そして、たとえ意見や考え方が違っても、すべての人の幸福のために力を尽くす、その思いでしっかり熟議しましょう〉

 これは「考え方は違うけどあなたのことは尊重します。より良い方向になるよう対話をしましょう」という姿勢。多くの場合、「右」「左」や「推進」「反対」と対立する論者同士はこんにち、相手を狂人扱いし、論破して屈服させようと試みます。が、辻元氏の表明は「国民にとって良い妥結点を模索しましょう」という穏当な形になっています。

 辻元氏は安倍晋三氏が亡くなった後、週刊ポストの取材に対し、首相を退任した安倍氏との議員会館廊下での思い出を語りました。

〈私が、「安倍さんいなくなってさみしいねぇ。もっと国会で安倍さんと議論したかったわ」って言ったら、「いやあ、菅(すが)さんとやってくださいよ~。僕はホッとしています」とおっしゃっていた〉

 かつての鈴木宗男氏や小泉純一郎氏との丁々発止のやりとりも含め、辻元さんはフェアな方だなと再認識しました。国会ではガツンとブチかますも、相手を全否定しない大人な考えだと。

 私は「ABEMA Prime」(ABEMA)という報道番組の準レギュラーです。安倍氏の国葬を巡る議論が盛んだった当時、この件に関して批判派の代表格だった辻元氏と立憲民主党のA議員の両氏と同番組に出演。

 A氏はもう「とにかくいかん!」的なことばかり言うので私はこう聞きました。

「野党は安倍氏をたたければなんでもいいと考えている節がある。共産、社民、立憲の関係者で反対デモをして朝日や毎日に取材してもらい、『これが民意だ!』と誇る。でも、そのやり口を10年以上続けて政権交代は結局成し遂げていない。いつまで続けるんですか?」

 するとA氏は「言論の自由を認めないのか!」と怒髪天。いや、安倍氏を無闇に攻撃する効果のない手法は捨て、勝てる戦略を考えたらいかがですか、ということだったのですが……。

 この点、辻元氏は「(国葬)決定までのプロセスがおかしい」という主張にとどめ、深く納得できました。

 左派の皆さまは日本社会を批判する時、日本がジェンダー・ギャップ指数ランキングの低位にあることを根拠とする場合が多い。今般、国のトップが女性となれば喜ばしい話だろうに、なお「何も変わらない……」みたいな嘆きが見られます。

 これでは保守派・右派の女性は、そもそも女性として認めないということになってしまいかねません。

 小池百合子氏についても「保守派のオッサン・爺さんに取り入るため保守派を演じる、結局は男のかいらい」扱いをするのが基本的論調。「名誉男性」なんて言い方も散見されます。女性の社会進出を唱える一方で「思想が相容れない女性」なら警戒感をあらわにする。それを思うに辻元氏のフェアさはひとまず際立っています。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』など。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

週刊新潮 2025年10月23日号掲載

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