毒舌もアドリブも“封印” 相性が悪すぎる「紅白」で「有吉弘行」は3度目で本領を発揮できるのか

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SNSで否定的な声

 有吉弘行が12月31日に生放送される「第76回NHK紅白歌合戦」の司会を務めることが発表された。彼と共に司会を担当するのは綾瀬はるか、今田美桜、NHKアナウンサーの鈴木奈穂子の3名。有吉が司会を務めるのは3年連続となる。【ラリー遠田/お笑い評論家】

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 このニュースが発表されたとき、SNSではさまざまな反応があったのだが、どちらかというと「また有吉か」「そろそろ変化が欲しい」といった否定的な声の方が強かった。過去2回の「紅白」において、有吉はそつなく司会という役割をこなしていたものの、一般的な評判が良いとまでは言えなかった。普段の毒舌キャラが鳴りを潜めて、淡々と進行をしていたことに物足りなさを感じていた人が多かったようだ。

 この点に関しては有吉に同情の余地もある。なぜなら、彼が得意とする「毒舌芸」は状況への依存度が高いものだからだ。民放のバラエティ番組で毒を吐いて笑いを生むことができるのは、それに必要な状況が整っているからだ。視聴者と番組の間で「そこでの発言は笑いを生むためのものである」という合意が形成されている状態にあるからこそ、多少過激なことを言っても、それが冗談であると受け止められて、笑いにつながる。

 しかし、「紅白」ではその考え方は通用しない。伝統のある国民的人気番組であり、普段は民放のバラエティ番組をあまり見ないような人でも、「紅白」は見ることがある。視聴者の数が多いだけでなく、世代も幅広く、それぞれの思想や価値観にも多様性がある。

「紅白」という場所で、毒舌を披露するのは容易なことではない。普段は気軽に言っているようなことでも、その舞台では冗談として通用しない可能性がある。他人を傷つけるような発言を「あえて」やっているのだとしても、その「あえて」を読み取ってくれない視聴者もいる。そのような状況ではあからさまな毒舌は封印せざるを得ない。

 また、別の事情もある。「紅白」は数あるテレビ番組の中でも特別な番組だ。そもそも生放送で行われる大型番組であるため、厳しい時間の制約があり、司会者が台本に書かれていない余分なことを言う隙間がほとんどない。その上、長い歴史のある番組ということもあり、アドリブや遊びの要素を入れること自体があらかじめ禁じられているようなところがある。

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