山中では「頭と胴体が離れた遺体」、温泉旅館には「血痕とメガネ」が残され…専門家は「人とクマの距離が異常に近づいている」ことを問題視

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人間とクマの距離

 1990年代後半になると近畿北部や中部地方でも同様の現象が確認された。やはり山間部の集落で人間と共存し、集落から出る残飯などを食べて生きる「集落依存型クマ」の存在が明らかになったのだ。

「2020年代に入ると、北海道でも人間の生活圏をテリトリーとするヒグマが確認され、『アーバンベア』と名づけられて注目を集めました。これは都市部に近接する森林地帯からヒグマが住宅街に移動し、住民の周辺で生活するようになったのです。さらに近年では秋田県の沿岸部などで『幼い時に森を出て、都市部の緑地帯で育つ』という、“都会っ子”のツキノワグマも発見されました。ここ数年は人間とクマの距離が異常なほど接近し、様々なトラブルを引き起こしているのはご存知の通りです」(同・米田氏)

 とはいえ、ツキノワグマでは異常に凶暴化して食うために次々と人間を襲う──という事例は極めて少ないのだという。

「考えていただきたいのですが、1年間に何千万人という人が山の中に入ります。キノコ狩りでクマに遭遇するだけでも珍しいのに、クマに殺されたケースとなると事例は天文学的な確率に跳ね上がります。まして北上市の場合、『10月8日に男性を死亡させたツキノワグマが人間をエサとして認識し、16日に温泉旅館の男性従業員を食べるために襲った』かどうかが取り沙汰されているわけです。このような食害事例は130年ほどで24人(註:2024年時点まで)だけです」(同・米田氏)

 ツキノワグマの世界に異常事態が起きている可能性があるわけだ。

 第3回【岩手県内で相次いだ衝撃的な“熊害”は同じツキノワグマによるものか? 専門家が「兄弟クマ」による“狂暴化”を疑う理由】では、約130年間分のクマ被害の歴史が指し示した重要な真実などについて詳細に報じている──。

デイリー新潮編集部

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