山中では「頭と胴体が離れた遺体」、温泉旅館には「血痕とメガネ」が残され…専門家は「人とクマの距離が異常に近づいている」ことを問題視

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 第1回【「ツキノワグマ」は“喰うために”次々と人を襲ったのか…専門家は「過去の常識では考えられない異常事態」の可能性を指摘】からの続き──。10月17日、岩手県北上市の温泉旅館からツキノワグマに連れ去られた可能性が指摘されていた男性従業員の遺体が発見された。(全3回の第2回)

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 男性従業員は温泉旅館の露天風呂を掃除していたところ、ツキノワグマに襲われたと見られている。翌17日に遺体が発見されたが、その際に近くにいたクマが駆除された。

 そもそも北上市では10月8日にも温泉旅館から約1キロ離れた山中で、高齢男性の遺体が発見されていた。男性の頭部は胴体と分離していたほど損壊が激しかった。担当記者が言う。

「焦点になっているのが、10月17日に駆除されたツキノワグマが、8日に高齢男性を襲ったクマと同一の個体かどうかという点です。もし同じクマだとしたら、8日に男性を襲って人間をエサとして認識し、16日に温泉旅館の男性従業員を食べるために襲いかかった可能性が浮上します。ヒグマならともかく、ツキノワグマがこれほどの凶暴性を見せていることに専門家からも驚きの声が上がっています」

 作家で、日本ツキノワグマ研究所の所長を務める米田一彦氏は「人間とクマの距離が近年になって非常に近づいているのは事実です」と言う。

「広島県や島根県では1980年代から、山間部に位置する集落の近くでツキノワグマが生活を営む現象が確認されていました。集落の人口が減少し、高齢者の割合が増え、ツキノワグマが接近しやすくなったのが原因です。私たち専門家は『この現象は北上する』と予想していましたが、その通りになりました」

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