高市首相「腹心」人事と「安倍元首相銃撃事件」との関係 「事件握り潰し」が運命の分かれ道に
「逮捕状握り潰し」
しかし、安倍氏の事件当時、中村氏は警察トップだったことで責任を問われ、副長官就任の道は絶たれたと見られていた。
「“首相を守れなかった警備面での最高責任者”という見られ方をしますから通常なら不適格者となるのですが、意外なことに“中村副長官はあり得る”との見方は割とありました。が、今年1月に露木氏が長官を辞めて以降、“官房副長官レースは間違いなく露木氏がリードしている”との指摘を聞くようになりました。露木氏が匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)の取り締まりなどで力を発揮したことを評価する人が多かったのだと思います。一方、“中村氏がNGな理由”について改めて浮上してきたのが、『逮捕状握り潰し』事案だと聞きました」(同)
「逮捕状握り潰し」とは、2015年4月に発生したTBSワシントン支局長による女性ジャーナリストに対する性的暴行事案で、警視庁刑事部長だった中村氏が逮捕状の執行取りやめを指示したことを指す。
警察内から苦言
支局長は安倍氏に最も近いジャーナリストだと自称し、「安倍政権に近いとされる中村氏が守護神のようにジャーナリストを守るべく逮捕状を握り潰した」などと当時の週刊新潮は報じた。
「中村氏は週刊新潮の取材に対して逮捕状の執行中止の指示を自ら認めていましたね。その後、社会部記者らに事実関係を問われた際に、“メディア社幹部の身柄拘束にはきわめて慎重にならざるを得ない”と話していたことがありました。問題となった事案だけが例外ではないと言いたかったのでしょう。ただ、警察内では“個別の事案について言及すること自体、不適切で不遜”“相当自信があったのかもしれないが、警視庁幹部が政権擁護をしているようにしか見えず、国民に不信感を与える”などといった声が警察キャリアを中心にあがっていたことは事実です。安倍氏の銃撃事件よりも“逮捕状”への対応の方が重要視されていたと見てよいのかもしれません」(同)
一方の露木氏は高市氏とスパイ防止法やサイバー関連法で気脈を通じていたとされ、今となっては霞が関では順当な人事と見られている。今年頭の長官退任からさほど時間が空いておらず「趣味のワインを楽しむひとときがもう少し欲しかった」という思いもないわけではなかったようだが、「国への奉仕」に対する思いの方が強かったということなのかもしれない。
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