なぜ「M-1」の人気は衰えないのか 過去最多の11521組が出場…「ブーム」を超え「行事」に

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毎年、ドラマが

 予選を勝ち抜いたファイナリストの漫才は間違いなく面白いのだが、その日の出来で優劣がつけられて、優勝者が決まる。その場の空気にも左右されるため、誰が勝つのかは本当に読めない。そこで毎年さまざまなドラマが生まれる。

「M-1」の歴史の中で最大のドラマと言えば、2007年大会でサンドウィッチマンが優勝したことだ。ほぼ無名だった彼らは、敗者復活戦を勝ち上がって劇的な優勝を果たした。そこから彼らの芸人人生は一変して、瞬く間にトップスターの座に駆け上がっていった。マイナーな事務所に所属する無骨な外見の2人が、面白さだけを武器にして栄冠を掴む姿は、多くの人に感動と興奮をもたらした。

 毎回このようなドラマが生まれるのが「M-1」の魅力である。昨年の大会では、令和ロマンが前人未到の二連覇を果たしたことも話題になった。何が起こるのかは事前にはわからない。ただ、毎回何かが起こる。そこに多くの人々が惹きつけられている。

 もはや「M-1」は一時的なブームを超えて、1つの行事として定着した感がある。ただ、そうは言っても、しょせんはただのテレビ番組であり、視聴率が取れなくなるといった何らかの事情があれば、いつかは終わりを迎えることになる。

「M-1」の人気を支えているのは「毎回必ず何かが起こる」という人々の期待である。結果的に今一つ盛り上がらなかったりして、期待を裏切るような回が何度か続けば、人気が衰えてしまうことも考えられなくはない。

 年々注目度が高まる中で、今年の「M-1」はその高いハードルを越えられるのか。すべては出場する芸人たちの手にかかっている。

ラリー遠田(らりー・とおだ)
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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