なぜ「M-1」の人気は衰えないのか 過去最多の11521組が出場…「ブーム」を超え「行事」に
一種の社会現象
漫才日本一を決める「M-1グランプリ」は、いまやお笑いファンだけでなく、日本中の人々が楽しみにしている国民的行事となった。年の瀬が近づくと「今年のM-1は誰が優勝するんだろう」といった会話が自然に交わされる。「NHK紅白歌合戦」と並ぶ年末の恒例行事としての地位を確立したと言っても過言ではない。もはや1つのテレビ番組という枠を超えて、一種の社会現象になっている。【ラリー遠田/お笑い評論家】
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その人気を裏付けているのが、エントリー数の増加である。「M-1」の予選に挑む人の数は右肩上がりに増え続けており、昨年には史上初めて1万組を突破した。そして、今年の予選もすでに始まっていて、過去最多の11521組がエントリーしたことが明かされた。
「結成15年以内」という条件さえ満たしていれば、プロ・アマ問わず、どんな人でも参加することができる。そのため、プロの芸人だけではなく、学生、社会人など、多種多様な人々が「M-1」に挑んでいる。「M-1」はプロの芸人にとって目指すべき頂であるだけでなく、一般人にとっても「非日常的な挑戦の舞台」として輝きを放っている。
お笑いそのものに対する世間の関心は、普段からそこまで高いわけではない。「M-1」以外のネタ番組や漫才番組がテレビで放送されても、必ずしも高い視聴率を取るとは限らない。普段から劇場に足を運んだりして、漫才やコントを見るのを楽しんでいるという人もそこまで多くはないはずだ。
にもかかわらず、「M-1」だけはお笑い界の中で圧倒的に注目度が高く、多くの人の興味の対象になっている。なぜ「M-1」はそこまで人気なのか。そして、なぜ長年その勢いが衰えていないのだろうか。
最大の理由は、「M-1」がただの漫才の大会ではなく、「筋書きのない熱い人間ドラマ」の舞台になっているからだ。「M-1」に挑む芸人は、長い時間をかけてネタを磨いて、一心不乱に優勝を目指す。数千組から1万組の出場者の中で、決勝に進めるのはわずか10組程度。その精鋭中の精鋭たちが、生放送の一発勝負の舞台で火花を散らす。
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