「東大卒の無職」と「元ヤンキー社長」が出会ったら…話題のドラマ「フェイクマミー」が共感を呼ぶワケ

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波瑠が替え玉受験

 残る親子面接については茉海恵が薫に向かって突拍子もないことを言い出す。

「私の代わりにママとして面接を受けてほしい。柳和の求める母親像に近いのは間違いなく薫さんだから」

 もちろん薫は断った。「それって犯罪ですよ」。有印私文書偽造罪などに問われる可能性がある。合格したって厄介だ。保護者会などに茉海恵は出られないのだから。

 そんなことは茉海恵も分かっていた。それでも替え玉を頼んだのは高校中退に引け目を感じていたから。面接官との受け答えに自信がなかった。薫は学歴の無力さを知りつつあったが、今の茉海恵にはそれが分からない。

 このまま第1回が終わってしまったら、このドラマは観る側を惹き付けなかったのではないか。だが、茉海恵がお受験断念を言い出し、流れがガラリと変わる。

 茉海恵が車を運手中、後続車を怒鳴り飛ばす映像がSNSで拡散されてしまったからだ。茉海恵は子供たちが横断歩道を渡っていたため、停車していたのだが、後続車が追い立てるようにクラクションを鳴らした。それに怒る茉海恵の姿がしっかり映されていた。

「やっぱり、アタシじゃダメだってことよ。そもそもアタシみたいな人間があんな格式高い学校の敷居をまたぐこと自体、あり得ない話なのよ」(茉海恵)

 それを聞いたいろははションボリするばかり。しかし薫は黙っていられなかった。

「いろはさんの夢はどうなるんですか?」

 薫は自分から替え玉受験を志願する。合格したら、学校だけの母親になることも約束した。フェイクマミーの誕生である。

 もしも茉海恵が金を積んで替え玉を依頼したら、興ざめだった。三ツ橋商事時代には自己中心的にも見えた薫が、子供のために逮捕覚悟で立ち上がったから胸を突かれた。

 17日放送の第2回では受験日を迎える。いろはが落ちたら物語が続かないから、きっと受かる。問題はどう面接を乗り切るか。学校関係者の1人である佐々木智也(中村蒼)は薫の初恋の人だから、油断は出来ない。

 茉海恵のビジネスの行方も注目である。世間には学歴のない成功者がいくらだっている。実力の世界は早々と多様化している。

 10日放送の第1回の視聴率は個人3.4%(世帯6.2%)でまずまず。若い人によく観られている。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社し、放送担当記者、専門委員。2015年に毎日新聞出版社に入社し、サンデー毎日編集次長。2019年に独立。前放送批評懇談会出版編集委員。

デイリー新潮編集部

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