「東大卒の無職」と「元ヤンキー社長」が出会ったら…話題のドラマ「フェイクマミー」が共感を呼ぶワケ

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川栄はヤンキー社長

 川栄李奈が扮しているのは日高茉海恵。自ら興したベンチャー企業「RAINBOWLAB」で社長を務めている。元ヤンキーで高校中退。今も髪型や服装からヤンキー臭をプンプンと漂わせている。部下に対して「てめぇ、ふざけんなよ!」と荒っぽい口調になってしまうこともある。

 さりとて才覚と人望はあり、コミュニケーション能力も高かったことから、会社は成功。次は株式上場を目指している。6歳の1人娘・いろは(池村碧彩)と暮らすシングルマザーだが、このことは公表していない。

 上場のマイナス材料になると思っているらしい。ありがちな話だ。世の多様性は偏狭。認められないことも多い。多様性がポーズに過ぎない場合もある。

 薫と茉海恵が歩んだ道はまるで違う。これからも交わりそうになかった。だが、薫がRAINBOWLABの入社試験を受ける。落ちたものの、茉海恵が薫の学歴に惚れ込む。

「家庭教師をお願いしたい」(茉海恵)

 いろはの先生になってほしいと頼む。いろはが希望する名門私立小・柳和学園に入れてあげたいのだ。

 勉強を教えた経験のない薫は渋ったものの、1日3時間で週5回、受験までの2か月間で120万円という破格の条件を出されたため、引き受けた。

 5680万円で買った中古マンションのローンがあったからだ。積立修繕費などを合わせると、月々の支払いは21万円にもなる。無職では苦しい。計画性が乏しい薫は、茉海恵と違って起業には向かない。

 その後、誠実に家庭教師に打ち込んだ薫と、実は気配りがあって努力の人だった茉海恵は打ち解けていく。薫はいろはに愛情に近いものを抱くようになる一方、茉海恵を尊敬するようになる。

「凄いですよね、仕事も子育ても本気で」(薫)

 高学歴エリートは往々にして叩き上げの成功者に弱い。茉海恵のほうも薫に憧れていた。薫が小学校から1度も受験に失敗したことがないからだ。もっとも薫は苦笑する。

「勉強が出来たからって、いい人生が送れるってわけじゃないですよ」(薫)

 本音だった。失業中で弱気になっていたので、余計にそう思った。しかし茉海恵は薫の言葉を認めない。

「それは東大に行けた人が言えること。私が東大に行けていたら、今よりいい人生だったと思ってる」(茉海恵)

 全く異なる経歴で、価値観にも共通点が見当たらない2人が、お互いを知ることにより、認め合った。多様化の実践の1つに違いない。  

 だが、現実には「個」の時代が進み、人と人とが密に接する機会は減るばかり。薫は退職の引き金となった子育て中の由実とも話し合ってない。

 いろはは悪ガキだ。でも天才的だった。太陽系惑星間の距離を独自の計算で割り出す。宇宙に憧れており、柳和学園に入りたいのも推しの女性宇宙飛行士の母校であるためだ。推理思考力などもあり、これなら柳和学園の筆記試験は十分クリアできる。  

 主人公2人の教え子で娘が、ピカイチの頭脳の持ち主で、名門小学校の受験に臨む。随分と都合の良い設定である。だが小学校受験のカギは行動観察と親子面接だ。

 柳和学園の入試の配点は筆記試験が50%、行動観察が30%、親子面接が20%。得点が合計80%に達すると、合格となる。実在する多くの私立小も行動観察と親子面接は重視する。

 行動観察は、受験する子供同士の中での主体性や協調性などを見る。いろははわがままなので、観察されたら、たちまちアウトだ。もっとも、対策のための塾や絵本が存在する。薫の場合、いろはをサッカー教室へ連れて行き、集団内での振る舞い方を学ばせた。カッとなったときの気の静め方も教えた。

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