高市総裁の「馬車馬」発言はなぜ反発を呼んだのか…仕事を“苦役”にしないために必要な「2つの要素」
先日、「マネーポストWEB」に高市早苗自民党総裁の「馬車馬のように働いて」「ワークライフバランスは捨てます」発言について、前者は身内の自民党国会議員に対するもので、後者は自分の気持ちを表したものだろう、と推測をした上で、「あくまで彼女の決意表明であり、国民への命令ではない」と書いたところ、読者から反発を受けた。
その後、Xでも「若い内に馬車馬のように働くとその後の人生がラクになる」と書いたら、これまた反発多数。例を挙げると、「あなたにはできても皆ができるわけではない」「個人の話を一般化するな」「あなたの言うような風潮の社会がイヤなんだ」「そんなことを言うから少子高齢化になるんだ」「仕事が楽しい人間は1割以下」的な意見である。【中川淳一郎/ネットニュース編集者】
【写真】大手広告会社社員からフリーランスに転身した筆者の「自由すぎる」仕事机
仕事=苦役?
反発した人は、恐らく「上司」があのような発言をすると、実際には「部下」が馬車馬のように働かされる、という経験をしているのかもしれない。仕事を上司から振られる組織人は、ついつい「働かされている」という感覚を抱き、こうした感想を持つ。高市氏があたかも上司のように見え「私はワークライフバランスを捨てて働きまくるので、あなた達も私ほどではないが、馬車馬のように働け」と宣言をされたように感じる人もいるだろう。仕事を選べない人間の苦悩である。
そこには「仕事=苦役」の考えがあるわけだが、いかにして苦役と思わないようにするか、について考えてみる。2010年に私は『凡人のための仕事プレイ事始め』という書籍を上梓した。仕事を「プレイ」と捉えることかによって苦役から脱却する、という内容である。
新卒で入ったのは激務で知られる広告会社で、たしかに残業時間は多かったがなぜか楽しかったのだ。あたかもサークルの部室に通っているような感覚があった。元々新入社員時代、最初に私の上司になったA氏は、若干ちゃらんぽらんなところがある人物で、いかにして外で会議をして、そのまま帰社せず飲みに行くかを考えるような人物だった。そんな彼の下にいるものだから、「なんだ、社会人だって滅私奉公の社畜ってワケじゃないんだな」ということがすぐに分かった。
その後ストイックな上司の下につき、私が日々疲弊していく様を見ていた人が何人もいて「大丈夫?」と声をかけられた。私自身も当時アメリカにいた両親の元へ行き入社2年目の8月にして「もうきつい。会社辞める」と伝えた。すると母親からは「Aさんの下に戻れないの?」と言われた。さすがに人事は自分の希望が通るものではないが、「もう少し頑張れ」と言われ、退社は留まった。
その数ヶ月後、神風が吹いた。なんと、組織改編で、私はA氏をグループリーダーとする5人の若手チームに入ったのだ。誰かが私をA氏の下に戻さないと潰れる、と部長に助言したのだと思われる。そこからは毎日部室に行くような感覚になり、会社が楽しくなっていった。
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