高市総裁の「馬車馬」発言はなぜ反発を呼んだのか…仕事を“苦役”にしないために必要な「2つの要素」

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キュウリを買いにスーパーへ

 仕事は楽しくて仕方がない、ということはなかったものの、少なくとも「一緒に働く人間のことが好きだからそれなりに楽しいし、苦役ではない」という状態になった。若手社員は今や貴重な存在になっているため、辞めてもらわないためにも、上司は日々社員同士の相性を把握しておくべきである。性格も考え方も合わない人間と毎日顔を合わせることほど不幸はない。また、それは若手の側も、一緒に働きたい同僚・上司を、人事権を持つ社員に伝えられるような人事制度が必要である。

 それに加え、仕事を苦役にしないためには、自分が本当に嫌なことを把握しておいた方がいい。新入社員の頃、超満員のJR中央線と山手線に乗り、立川から田町まで通っていた。ドアトゥドアで1時間40分である。家畜を運ぶトラックですらここまで酷い混雑じゃないだろうよ……と毎日思っている内に耐えられなくなって1年2ヶ月後には田町まで当時5駅の恵比寿に部屋を借りた。

 またある時には、ケーキ屋の販売員とウェイターを同時期にやったこともあるのだが、「お客様は神様です」的にへりくだる接客業はもうしたくなくなった。いきなり「水!」と大声で言われ、お冷やを持って行くと「遅いんだよ、チッ!」なんて中年サラリーマンから言われた。お前は何をそんなに怒ってるんだ。

 というわけで、客を選べない接客業というものは自分には向いていないことも把握。そうこうしている内に、クライアント企業の展示会の仕事を九州で担当した時、相手の課長がいきなりキレ始めた。

「なんや! この店は焼酎のキュウリ割がないんか!」

 オシャレなカフェバーである。店員も「キュウリはないのですが……」と言うとすさまじい剣幕で「なんでキュウリを置かんのや! ワシはそれ以外今は飲みたくない!」とキレまくる。そこで私が外に出てなんとか開いてるスーパーを見つけてキュウリを買い、店員に「すいませんね、ワガママ言いまして」と謝った。

 これも一種の接客だが、サラリーマンをしている以上、この手の話はあるわけで、だったらサラリーマンそのものも苦役だ、とりあえず無職になってしまえ、と突発的に会社を辞めた。後にフリーランスのライター・編集者となり、接客的なことは一切しないで済む人生を手に入れた。

 というわけで、苦役を回避するためには、イヤなことをリストアップし、そこに抵触しない職場や働き方を目指すべきである。「ウチは田舎だからそんな仕事はないんだよ…」と言うのであれば、東京や大阪に引っ越してしまうのも手である。文句を言うよりも動いた方が苦役からは逃れられる。

中川淳一郎・ネットニュース編集者

デイリー新潮編集部

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