【ばけばけ】ついにトキが知る「出生の秘密」だが…モデルのセツは自分の生まれを3歳から知っていた

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司之介が動揺した「あの話」とは

 明治時代の士族にありがちだが、松野司之介(岡部たかし)が巨額の借金をかかえてしまい、彼が家主の松野家はにっちもさっちも行かない。そこで娘のトキ(高石あかり)は、働き手を増やすためにも「婿様をもらいましょうか?」と提案した。NHK連続テレビ小説「ばけばけ」の第1週「ブシムスメ、ウラメシ。」(9月29日~10月3日放送)。

 それを受けて、第2週「ムコ、モラウ、ムズカシ」(10月6日~10日)では、トキの見合い相手をさがし、実際に見合いをするところが描かれた。母の松野フミ(池脇千鶴)はトキに、必ず見合い相手を見つけると約束したが、極貧の士族にとって、娘の良縁を探すのは簡単ではない。そこで、遠縁の雨清水傳(堤真一)とタエ(北川景子)の夫妻が、トキの見合い相手探しを請け負った。

 だが、最初の見合いは思わぬことが原因で失敗した。父の司之介と祖父の勘右衛門(小日向文世)が、髷に裃姿でトキの見合いに臨み、当人どうしは悪い印象ではなかったにもかかわらず、「武士を引きずりすぎている家に婿入りするのは難しい」という理由で、断られてしまったのである。

 後日、松野家は宇清水家に謝罪に訪れた。すると傳とタエは、トキ以外、つまり松野司之介とフミ、勘右衛門は席を外すように求めた。そこでトキの両親が動揺したのである。司之介は「あのお、いったいどげな話を?」と尋ねる。傳は「それをいったら、外す意味がなかろう」と返答するが、心配な司之介は「そげですが、『あの話』ではございませんでしょうな?」と食い下がる。傳が「どの『あの話』じゃ?」と聞き返すと、「『あの話』は『あの話』でございます」と司之介。

 じつは、この言葉の応酬に、筆者は少し違和感を覚えた。

生まれて8日目にもらわれていった

 トキのモデルのセツは、松江藩の中堅藩士(100石の組士)、稲垣金十郎とトミ夫妻のもとで育った。この稲垣夫妻が「ばけばけ」での松野夫妻のモデルだが、セツの実父母ではない。実父母は稲垣家の遠縁で、同じ松江藩士でも稲垣家より格上(300石の番頭)の小泉湊とチエ夫妻だった。

 小泉夫妻は稲垣夫妻とのあいだで、今度子供が生まれたら養子にあたえるという約束を交わしており、セツは生まれて8日目に、稲垣家にもらわれていったのだ。「ばけばけ」では、松野家の両親はトキのことを「オジョ」と呼ぶが、これは上級の家に生まれたお嬢を意味する言葉で、実際、トキのモデルのセツも、稲垣家でそう呼ばれていた。

 要は、「ばけばけ」のトキの実父母は宇清水夫妻で、松野夫妻が心配していた「あの話」とは、彼女の出生の秘密のことである。つまり、宇清水夫妻がトキに、本当の両親は自分たちで、松野の父母は養父母なのだと伝える気ではないか、と心配したのである。

 第3週「ヨーコソ、マツノケヘ。」(10月13日~17日放送)では、このトキの「出生の秘密」が、重要なエピソードのひとつとしてあつかわれる。

 トキは2度目の見合いの相手である銀二郎(寛一郎)とめでたく結婚し、銀二郎は貧しい松野家に婿入りした。そしてトキの帰りが遅いある日、司之介とフミはトキの出生に関する話をしたが、部屋の隅では銀二郎が内職をしていた。むろん、話は銀二郎にも聞こえてしまったわけだが、司之介は「なにも聞いちょらんよな」と銀二郎を威圧して、こういうのだ。

「オジョはおタエ様が産んだ、元は宇清水家の子じゃ。じゃが、オジョはなにも知らん。だけん、寝言でもいうなよ」

 しかし、トキのモデルになったオジョ、すなわちセツにとっては、自分がもらわれたことは秘密でもなんでもなかった。

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