大苦戦「もしがく」の視聴率はV字回復できるか 三谷幸喜とフジが組んだ伝説的ドラマ3作との“大きな違い”とは
登場人物が多すぎ
〈今回の設定は特に「ムーミン」に似ているかもしれない。舞台となる「渋谷八分坂」は、ある意味、ムーミン谷だ〉
【写真で見る】丸いタイプか、それとも四角で決めるか…三谷先生のお気に入りはどっち!?
脚本家の三谷幸喜氏(64)は、自身が手掛ける放送中のドラマ「もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう(以下、もしがく)」(フジテレビ系)を、自身の連載コラム(「三谷幸喜のありふれた生活」朝日新聞10月9日夕刊)でこうたとえた。「もしがく」は、三谷氏の半自伝的要素を含んだ完全オリジナルストーリーで、舞台は1984年の渋谷。渋谷駅から徒歩8分の架空の街「八分坂(はっぷんざか)」で起こる青春群像劇だ。
主演を国内の俳優を代表する主演クラスの1人である菅田将暉(32)が務め、その脇をいずれもNHK朝の連続テレビ小説で主演・ヒロインを務めた二階堂ふみ(31)、神木隆之介(32)、浜辺美波(25)が固めるという他局がうらやむ豪華キャスト陣のドラマだ。
「豪華なのはキャストだけではありません。舞台となる八分坂は千葉県内に巨大なセットを設けるという、まるで動画配信サービス・Netflixのような予算の使い方。街のモデルは渋谷百軒店で、菅田演じる主人公らが働くメイン舞台のWS劇場は道頓堀劇場がモデル。浜辺演じる役が巫女を務めるのは、千代田稲荷神社がモデルの八分神社です。フジといえば、一連の問題で苦境に追い込まれるも、徐々にスポンサー企業のCMが戻って来ました。そんな苦境から起死回生を図るように予算をぶち込んだ同ドラマ。これまで数々のヒット作を手がけた三谷氏の渾身の作品とあって、誰もがヒットすることを疑わなかったのですが……」(放送担当記者)
10月1日に30分拡大で放送された初回の平均世帯視聴率は5.4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区、以下同)、15分拡大の同8日放送の第2話は1.1ポイントダウンの4.4%と、かなり厳しい数字を突きつけられることになってしまった。第1話の見逃し配信数が6日間(10月1~6日)で200万再生を突破したのがせめてもの救いか。
ちなみに、「もしがく」と同じ水曜午後10時枠の前作「最後の鑑定人」は初回が5.0%、第2話が4.6%で全11話の平均は5.0%だった。また、「もしがく」第2話の裏でスタートした、桜田ひより(22)とボーカルダンスユニットM!LKの佐野勇人(27)がダブル主演のサスペンスドラマ「ESCAPE それは誘拐のはずだった」(日本テレビ系)は4.7%で早くも「もしがく」を上回った。
「まだ撮影中ならば修正もできますが、すでに撮影が終了しているため、運を天に任せるしかない状態なのです。おまけに、このタイミングで同ドラマのプロデューサーがフジを退社してしまったとの報道も。まさに踏んだり蹴ったりです」(同前)
朝日の連載で三谷氏は初回について、《人物紹介で終わてしまったという感想が多かった》《そうならないように努力したつもりだったから、これはちょっと残念》と反省したが、このドラマ「ムーミン」同様、とにかく登場人物が多い。ざっと並べてみよう。
・久部三成(菅田) 主人公・元劇団演出家。シェークスピアを敬愛し蜷川幸雄にあこがれる
・倖田リカ(二階堂) 謎多きWS劇場のダンサー
・蓬莱省吾(神木) 駆け出しの放送作家。三谷氏の若いころがモデルのキャラ
・江頭樹里(浜辺) 八分神社の巫女
・大瀬六郎(演・戸塚純貴、33) 超堅物の新任巡査
・パトラ鈴木(演・アンミカ、53) WS劇場の古参ダンサー
・毛脛モネ(演・秋元才加、37) シングルマザーのWS劇場のダンサー
・いざなぎダンカン(演・小池栄子、44) WS劇場のダンサー
・トニー安藤(演・市原隼人、38) WS劇場の用心棒
・江頭論平(演・坂東彌十郎、69) 八分神社の神主。樹里の父親。実はWS劇場の常連客
以下、小林薫(74)、井上順(78)、堺正章(79)、さらには声だけ渡辺謙(65)までが初回に登場するというカオス。
「ムーミン谷」のような「八分坂」の住人たちを紹介したところで、第2話ではオーナーの意向でWS劇場を閉めることが決まるも、久部が劇場の支配人に対して、演劇ブームの時流に乗って舞台公演を行う劇場へのリニューアルを提案――ようやく今後の話の方向性が見えて来たが……。
「豪華キャストを集めて金をかけ、ヒットメーカーの三谷氏に依頼すれば……と考えたのかもしれません。でも、昨今、特に若年視聴者は連ドラといえども、続けて見なくてもいい1話完結の作品が好まれる傾向にあります。大河ドラマでは当たる三谷氏の脚本は、今回も大河ドラマそのもの。毎回見続けないと話が分かりません。これはダメかもしれないという悲観的な声も聞こえてきます。というのも、これまでフジで放送され、三谷氏が手がけていずれもヒット作となった過去ドラマの要素が、ほぼ皆無なんです」(フジ局員)
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