シングルマザーと結婚、“娘”は10歳年下…「あの子のほうがお似合い」と言われた妻のひきつった笑みと、2年半で終わった家庭生活

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突然の接触

 だが、それは徐々に明らかになっていく。美和子さんがまた出張でいない夜、優希さんが夜中に秀顕さんのベッドに潜り込んできたのだ。その日は疲れ切って早めに休んだ秀顕さんは熟睡していたから、一瞬、妻が戻ってきたのかと勘違いして抱き寄せようとした。だが「抱いて」という声を聞いて飛び上がった。優希さんが腕を彼の首にからめていたのだ。

「息が止まりそうになった。何をしているんだと思わず突き飛ばしてしまいました。すると優希はベッドから転がり落ちたときに手をつこうとして手首をひねったようです。痛い痛いと騒いだので、あわてて湿布をして……。でも『ああいうことはやめなさい。2度とするな』と厳しく言っておきました」

 翌日、病院に行った優希さんは手首の捻挫だったようで、やけに大げさに包帯を巻いていた。帰宅した美和子さんに聞かれて「転んだ」と言っていたが、秀顕さんはなんとなく嫌な予感がしたという。

「あなた、優希を誘惑してるでしょ」

 それからは妻が出張だったり残業だったりすると、優希さんが何かしかけてくるようになった。夕飯後にリビングにいるとぴったりくっついて座ってきたり、ふたりで外食をした帰り道に腕をからめてきたり。不意にキスしようとしてきたこともあった。

「僕はきみのおかあさんの夫だよと何度も言ったし、いいかげんにしろと怒ったこともある。怒るとさめざめと泣くので、なんだかこっちが悪いことをしたような気になる。それで僕のほうがだんだん疲弊していきました」

 正直言って、若い女の子がべったりくっついてきたら僕だって反応してしまうことがある。優希はそれを見逃さなかった。秀さん、私のこと好きでしょと優希さんは言って、さらに迫ってきたこともあるそうだ。20代後半の彼にとっては生き地獄のような状態だったのかもしれない。

 しばらくたってから、美和子さんが「出て行って」と突然、切り口上で言った。「あなた、優希を誘惑してるでしょ。優希が泣きながら告白したの」と。ああ、そうきたかと彼は思った。いつか何かあると思っていたが、こういう形で、優希さんは母親を取り戻そうとしたのか、あるいは母親に嫌がらせをしたのか。いずれにしても、ふたりきりで生きてきたせいだろうか、母と娘には密着と依存と反発が飛び交っているように、秀顕さんには見えていた。

 彼は黙って荷物を整理し、優希さんの顔を見ないまま翌日には家を出た。やり残したことがあるような気もしたが、ゼロから生き直そうと決めた。

 ***

 「家族」を続けようとの努力もむなしく、秀顕さんの夫婦関係、親子関係は崩れてしまった。【記事後編】では、別の女性と築いた家庭に起きた“悲劇”を紹介している。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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