シングルマザーと結婚、“娘”は10歳年下…「あの子のほうがお似合い」と言われた妻のひきつった笑みと、2年半で終わった家庭生活
「優希ちゃんのほうお似合いなんじゃないの?」
その日を機会に、秀顕さんと美和子さんは、ときどき娘を交えて会うようになった。何度目かのとき、優希さんは「もういいかげん、結婚しちゃえば?」と言った。美和子さんはあわてて「秀顕さんは、もっと若い人と結婚したほうがいいんじゃないかと私は思ってる」といきなり言った。
「いや、僕はプロポーズしたじゃないか、きみと優希ちゃんさえよければ僕は本気だよと必死で訴えた。優希は『おかあさん、ひとりでがんばってきたんだから、このあたりでご褒美もらってもいいかもよ』と美和子を泣かせました」
3人で話し合って結婚式は挙げなかったが、ふたりの仕事関係者や友だちを呼んで質素ながら心のこもったパーティを開いた。優希さんの親友も駆けつけてくれた。
「最初から3人で生きていこうという雰囲気は作りました。優希ももうじき大人という年齢だったし、なにも隠すことはない。ただ、多感な時期なので、どう扱ったらいいかは迷いました。僕と優希は10歳しか違わない。パーティで、知り合いから『優希ちゃんのほうが秀顕さんとお似合いなんじゃないの?』と冗談を言われた美和子は、ひきつった笑いを浮かべていました。それが気になって、僕は母娘をそうっと見守る控えの選手みたいな気持ちでいようと決めたんです」
秀顕さん自身、恋愛には晩熟なタイプで、美和子さんがふたり目の女性だったという。生まれ育った家庭は、両親と弟。中高時代は私立の男子校だったため、女性には慣れていないと自ら認識していた。だからこそ、美和子さんの言いなりになろうと思っていたのだ。
学校や塾をサボるようになった優希さん
「1年くらいはごく平穏な家庭生活でした。美和子も少しだけ仕事をセーブしていましたし、優希は大学受験をするからと塾に通っていた。ある種の緊張感はあったと思うけど、ごく普通の家庭っぽく3人ともふるまっていました。いい家族になりたいという思いは、それぞれ強くあったと思います」
ところがそれが徐々に崩れていった。ひとつには美和子さんの仕事があるときから一気に増え、逆に人手不足となって彼女自身が飛び回らなくてはならなくなったこと。好不調がある仕事だから、人手を急に増やすわけにもいかず、彼女自身が時間を費やすしかないのだという。代わりに秀顕さんが家事を担ったが、彼自身もちょうど仕事が順調で「もっとスキルを磨きたい」時期だった。そんな中で、優希さんは精神的に不安定になったのかもしれない。
「ある日、塾から無断欠席していると連絡がありました。続いて学校からもあった。娘の様子はおかしくはなかったけど、学校や塾へ行かずにどうしているのか……。ちょうど美和子が出張していたんです。『私が聞くとケンカになるかもしれないから、あなたから聞いてみて』と言われました。『学校や塾から連絡があったよ』とさりげなく優希に言うと、バレたかみたいな顔をしてた。サボりたくなる気持ちはわかるし、たまにはサボってもいいと思うけどねと僕も軽く言ってみたんです。すると優希は前のめりになって、『秀さんもサボったことある?』って。僕はずっと秀さんと呼ばれていました。おとうさんと呼ばせるのはおこがましくて」
サボったことはいくらでもある、だけど最終的に取り返しがつかないことにはならないようにしたよと言うと、「ふうん」と優希さんは短く返した。
「それがなんだかつまらない人生を送っているねと言われたような気がして、ちょっと傷つきました。美和子に報告すると、考えすぎだと笑われたけど、優希自身が僕を父親のように見てくれているのか、単なる母の結婚相手として考えているのかがわからなくて悩みましたね。かといって、そんな心の中にまで踏み込めないし」
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