娘を亡くしたはずの家に並ぶ真新しい絵本、子供靴、歯ブラシ… “開けてはいけない部屋”に触れられた母の豹変【川奈まり子の百物語】
再会は保護者席で
異変が起きたのは、珠美さんの娘の中学校の入学式の日だった。
娘は住んでいる地域の公立中学校に進学したのだが、新入生の保護者席に従姉がいたのだ。そして、笑顔で話しかけてきたのである。
「娘ちゃん、うちの子と同級生だね。よろしく」
珠美さんが言葉を失って立ちつくすと、従姉は怪訝そうに首を傾げて、「~組でしょう? 違った?」と言った。
「……ううん。違わない……けど……」
あんたの子はいないでしょう、と、心の中で叫んで、実際には黙り込むしかなかった。
従姉は上品なスーツ姿で血色も良く、珠美さんと、話を聞いてすべてを把握していた珠美さんの夫さえ何も言わなければ、保護者の1人に見えていたはずだった。
しかし、式が始まる直前に、学校の職員が従姉を見咎めた。
「保護者のかたには名札を付けていただいているので、受付を済ませてください。申し訳ございませんが、部外者は参加できない決まりで……」
「部外者じゃありません。新入生の母親です」
「では、受付へいらしてください。こちらです」
従姉は職員に連れていかれて、その後、戻ってこなかった。
珠美さん夫婦は大いにホッとした。
しかし、それからしばらくして、娘に異変が起き始めたのだ。
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異常な暮らしぶりの従姉と、娘の中学入学式でまさかの再会。【記事後編】では、その後、女子中学生の娘に起きた異変に迫る。
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