韓国で「食べ放題」が大流行する悲しき事情 1,000円~3,000円で好きなだけ…“食文化破壊”に懸念も
韓国で「韓食バイキング(ハンシク・ビュッフェ)」の人気が高まっている。日本でいう食べ放題・盛り放題のサービスだが、日本ではまずお目にかかれないリーズナブルなお値段だ。現地ではビジネスマンを中心に支持を集めているが、喜んでばかりもいられない実情もあるようだ。現地ジャーナリストのノ・ミンハ氏がレポートする。
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【写真】どこか哀愁漂う?韓国でブームの様相を呈している「食べ放題」メニュー
ソウル地下鉄「江南駅」に隣接する3号線・新盆唐線の良才(ヤンジェ)駅。大小の会社がひしめき、ビジネスマンのランチ競争も苛烈なこの地で、昼時になると一部の店は大きな賑わいを見せている。「韓食バイキング」を提供する店だ。
といっても、専門店ではない。普段は韓国料理店、夜は居酒屋を営むような個人店が、昼の時間帯だけ韓食バイキングのサービスを行っているのだ。多くは1万ウォン(約1,060円)で、昼の12時から午後2時頃までをバイキングタイムと設定し、その間はトレーに好きなだけ料理を盛って食べられる、という仕組みだ。
ご飯、汁物、キムチ(またはカクテキ)がつき、ほかのメニューは基本的に日替り。トンカツやチキン、酢豚、ウインナーやスパゲティ、スープ、ハンバーグ、ナス炒め、たこ焼き、ナゲット、目玉焼きなど、和洋中も取り揃えている。レトルト食品をそのまま出しているような店もある。
もはやブームの様相
興味深いのは、「韓食バイキング」を大々的に謳うわけでもなく、グルメサイトに登録もしていないような個人店がこうしたサービスを行っているという点。店先の黒板に「今日のメニュー」を書くだけで、宣伝しなくともビジネスマンが自然と集まってくるという。
人気の秘密は、言うまでもなく安さである。物価高と長引く景気低迷の時代に、これだけの品数を1万ウォンで好きなだけ食べられるのだから、わざわざ他の店に行く必要がない……ということらしい。個人店としても、苛烈な生き残り戦略の一手として、「食べ放題」に参入せざるをえない、ということもあるようだ。
韓食バイキングの店は良才駅に限らず、ビジネスエリアなら必ず2〜3軒はあるといっていい。たとえば2号線・瑞草(ソチョク)駅や5号線・光化門駅、九老デジタル団地駅、トゥクソム駅、汝矣(ヨイド)島駅、市庁駅など。その広がりはブームと呼べるかもしれない。
人気ぶりはSNSでも証明されている。ユーチューブやティックトック、インスタグラムには、日替わりメニューをトレーに盛りつけて紹介するショート動画が続々投稿されている。それらには「行きつけの韓食バイキングより豪華」「ビジネスマンじゃないけれど、わざわざ食べに行きたい」といったコメントが並ぶ。
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