韓国で「食べ放題」が大流行する悲しき事情 1,000円~3,000円で好きなだけ…“食文化破壊”に懸念も
ホンパプ文化が失われる?
筆者も8月、汝矣島駅近くの韓食バイキング店に入ってみた。正午にはすでに満席状態。夜はチキン専門店になるようで、揚げ物には自信があるようだった。料理はやはり多彩で、トレーに載せきれないほど。にもかかわらず1万ウォン。普通の店でこれらを頼んだら、この金額ではとても収まらないボリュームだ。味も悪くない。新鮮なフルーツまで食べられ、デザートも用意されている……。
常連だという後輩記者はこう話す。
「大学時代は安くておいしい学食があったけれど、卒業後は食べられなくなった。韓食バイキングはその代わりです。安くてメニューが豊富、味もいい。何よりひとりで食べても人目を気にしなくてすむのが大きなメリット」
確かに韓国では「ホンパプ(ひとり飯)」を避ける文化はまだ根強く残っている。ランチタイムに一人客を断る店すらある。会社員がひとりで食べていると「職場で問題を抱えているのでは」と見られがちだ。しかし、筆者は韓食バイキングではひとりで食事をしても、何の違和感を覚えなかった。実際、周囲にもひとり客は多かった。“コスパ飯”の側面が強い食事だからだろうか。ビジネスマンの食習慣も不況の中で様変わりを見せているようにも映る。こうした風景が当たり前になれば、「ホンパフ」を特別視することもなくなるのだろうか。
チェーンも続々とサービス導入
この韓食バイキングに目をつけ、チェーン展開する企業もある。代表格は焼肉バイキングの「明倫ジンサカルビ」で、味付けカルビやサムギョプサル、骨付き肉、ステーキ、味付けウナギ、辛口タッカルビに加え、トッポッキや揚げ物、チャプチェ、野菜、さらにパンやドリンクも食べ放題という大判振る舞いだ。全国に店舗を構え、SNSを通じて海外にも知られている。日本人観光客の投稿も少なくない。
かくいう筆者も常連で、2万ウォン(約2,120円)もしない値段で炭火焼肉が好きなだけ食べられるので、他の焼肉店に行く理由がなくなってしまった。「明倫ジンサカルビ」以外にも、「火炉商会」「オントリセンコギ」「トンクンソ」「宴会の達人」などが韓食バイキングに参入してきた。「江南豚商会」は店舗数こそ少ないが、観光客が多い江南駅や明洞、弘大入口にあるため、観光で訪れる日本人も目にする機会が多いだろう。
日本の「しゃぶしゃぶ」はかねてより韓国でも浸透しているが、そうしたチェーン店も韓食バイキングに流れ込んできている。明倫ジンサカルビの系列である「Shabu All Day」は、全国展開するしゃぶしゃぶバイキングで、肉も野菜も注文し放題であるのに加え、やはり韓食や洋食メニューも揃う。店舗によって差はあるが、平日ランチは平均で約25,400ウォン(2,850円)ほど。前出の店よりは高いものの「この内容なら決して高くない」と人気で、有名芸能人が広告塔を務めている。競合チェーンも対抗し、追加肉を有料から食べ放題へと切り替えるところも出てきている。
さらに“異色バイキング”も話題を読んでいる。トッポッキ専門の「トゥッキ」、フライドチキンの「BBQチキン」のバイキングはチーズボールやソトクソトク(ソーセージとトッポッキ餅を使った串グルメ)なども食べ放題だ。ほかにも、中華料理、ウナギ、カンジャンケジャン、貝焼き、タッカルビなど、多彩なバイキングが次々登場している。
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