「外国人が多い町」に見つけた共通点 新大久保でも西川口でもない“意外な地域”に注目すると

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2つのエリアに共通する特徴とは

 実は、この2つのエリアには、先述した川口市芝園町と同様、「UR賃貸」がある。

 江東区大島四丁目にはその名も「大島四丁目」という1~7号棟・2514戸からなる大規模な団地がある。

 また、江戸川区清新町一丁目は「葛西クリーンタウン 清新プラザ」「清新南ハイツ(賃貸)」(1543戸)のUR賃貸のほか、「清新北ハイツ」「清新中央ハイツ」「清新南ハイツ(分譲)」といったUR分譲(1978戸)や東京都住宅供給公社の「シティコープ清新」(分譲:399戸)、「コーシャハイム清新」(賃貸:322戸)など、合計4242戸の団地群で構成されている。

「大島四丁目」は1969年竣工(築56年)。高度経済成長期の住宅供給政策に基づき、工場跡地に開発された。現在江東区の「都市計画マスタープラン」や「浸水対応型まちづくり」政策の重要拠点の一つ。防災拠点、緑道公園、商店街との連携を進め、団地建て替え(2025年以降段階的に着手予定)を契機に全面的な再生まちづくりが推進されている。

「葛西クリーンタウン 清新プラザ」は1983~1984年に供給された。江戸川区の埋立地を活用したニュータウン事業の一部。現在は地域住民の多文化共生や高齢化対応に注力し、コミュニティ・防災拠点として整備が進められている。

 戸数ベースで町の9割近くをUR賃貸が占める芝園町の例とは異なり、大島四丁目(UR賃貸比率:約7割)、清新町一丁目(同:約4割)のUR賃貸に、どれだけ外国人の居住者がいるかを推測することはできない。ただ、建物の老朽化が進み、だんだんと日本人が流出する一方で、「礼金なし・手数料なし・更新料なし・保証人なし」を売りにするURの賃貸住宅が外国人のニーズに合致し、地域の国際化を一気に推し進める要因になった可能性はないだろうか。

江東区と江戸川区に問い合わせると…?

〈編集部が江東区と江戸川区に対し、外国人居住者が多い理由、UR賃貸住宅の影響について尋ねたところ、以下のように回答があった。〉

「お尋ねの大島四丁目や大島六丁目が、外国人比率の高い地域であることは把握しております。また、そうした地域にURの公営団地があるのも事実です。ただ、区内の他のエリアにもURの賃貸住宅はございますし、UR賃貸と外国人比率の関係性を調べた調査結果があるわけでもありませんので、この地域の外国人比率が高い理由について、確かなところはよく分かっていません」(江東区・区民課の担当者)

「清新町一丁目の外国人比率が高いのはその通りです。ただ、公営団地と言っても民間の賃貸と比べて極端に家賃が安いわけではありませんので、UR賃貸などが外国人比率を上げる要因になっているかは何とも言えません。我々の共通認識として、この地域は特にインド国籍の方が多く、それはインドの大手IT企業の日本支社の多くが大手町にあることが関係しているそうです。大手町まで東西線を使って1本で通え、都心と比べ家賃の安い西葛西にそのようなIT企業に勤めるインド人の方が増え、インド人のコミュニティもできています。清新町一丁目は西葛西に近接するエリアですので、インド人の方が集まりやすいのかも知れません。ちなみにUR都市機構さんは、インド人コミュニティと地域住民との融和を図る催しもされていますね」(江戸川区・地域振興課の担当者)

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 折しも9月から10月にかけて、2025年の国勢調査の実施の最中だが、最新結果が公表された時、私たちはどのような現実と向き合うことになるのだろうか。

【著者プロフィール】
マン点(まんてん) マンションアナリスト。一級建築士。20年以上続けている不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」の管理人
X(旧Twitter):https://x.com/1manken

デイリー新潮編集部

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