「とんねるず」の看板は守り抜く 「石橋貴明」不在も「木梨憲武」が単独で「スポーツKING」参戦の意味

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人間的な魅力

 木梨がレジェンド級の芸能人やアスリートを一堂に集めることができるのは、普段からの交友関係の広さと人間的な魅力によるものだ。年齢や立場を超えて自然に人を惹きつけるその人柄が、多くの人を招き寄せ、番組の質を高めることにつながっている。木梨が主導することで競技を超えた「遊び心のある真剣勝負」が成立する。

 木梨は以前からアートや音楽の活動をはじめとして、ジャンルを横断して自由な表現を続けており、そのセンスが番組作りにも生かされている。今回の「スポーツKING」では、従来の「バトル形式のスポーツバラエティ」から、よりエンタメ性を重視した演出になる可能性が高い。

「スポーツ王」における石橋が現場を統率する監督型のリーダーだったのに対し、木梨は自らが自由に動くプレーヤー型のリーダーである。彼自身がフィールドに立ち、笑いながら、時にムチャぶりをしながら、全体の空気を自在に操る。その即興的な面白さが番組にリズムを与え、予定調和に陥らない自由な雰囲気を生み出す。

 木梨が1人でこの番組を引き受けることを決めたのは、石橋へのエールという側面もあるだろう。2人で築いてきた歴史を壊すことなく、「とんねるず」という看板を守り抜く。それが自分の使命だと考えているに違いない。

 とんねるずは、誰よりも「遊び」を真剣にやってきた芸人である。それが彼らだけの独創的なスタイルだった。その精神を今回の番組では木梨が1人で体現することになる。「スポーツKING」は単なるスポーツバラエティ特番ではない。それは、木梨憲武という表現者が、相方への思いを胸に、自らの手で「とんねるず」という物語を続けるための儀式なのだ。

ラリー遠田(らりー・とおだ)
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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