「公式戦未勝利男」や「公立の星」が大活躍!ポストシーズンの“秘密兵器列伝”

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 10月11日からクライマックスシリーズ(CS)のファーストステージが開幕する。シーズン3位から日本シリーズ進出を狙う巨人・阿部慎之助監督は10月5日、今季出場わずか17試合のベテラン・長野久義をベンチ入りさせる考えを示唆した。そして、過去にもレギュラーシーズンでは出場機会に恵まれなかったにもかかわらず、プレーオフやCSで一躍ブレイクした“秘密兵器”と呼ぶにふさわしい選手が存在した。【久保田龍雄/ライター】

気持ちで負けないように

 公式戦未勝利の投手がポストシーズンでプロ初勝利を挙げるというNPB史上初の珍事の主人公となったのは、ソフトバンク・柳瀬明宏だ。

 2006年、龍谷大から大学・社会人ドラフト6巡目で入団した柳瀬は、大学4年秋に右肘の手術を受けた影響で、プロ1年目は「体づくりの1年だと思っていた」という。

 だが、経過は良好で、8月下旬に1軍昇格を果たすと、リリーフとして10試合に登板し、9月12日のオリックス戦ではプロ初ホールドも記録した。

 シーズン最後に6連敗を喫し、3位で終わったソフトバンクは、「療養中の王(貞治)監督に日本一をプレゼントしよう」という合言葉を胸に、プレーオフ第1ステージで2位の西武と対戦した。エース・斉藤和巳で必勝を期した10月7日の第1戦は、松坂大輔との投手戦の末、0対1の惜敗。早くも崖っぷちに追い詰められた。

 そんなチームの危機を救ったのは、23歳のルーキー右腕だった。

 翌8日の第2戦は、4回に仲沢忠厚が満塁の走者一掃となる二塁打を放ち、4対1と逆転したが、5回に先発・和田毅がつかまり、1点を返され、なおも1死二、三塁のピンチを迎えた。一打同点の場面でプレーオフ初登板のマウンドに立った柳瀬は「気持ちで負けないように、自分の力を100パーセント出そう」と物おじしないピッチングで、中島裕之の犠飛による1失点のみに抑えた。

 さらに6、7回も3者凡退に抑え、2回2/3を無安打4奪三振で切り抜け、うれしいプロ初勝利を挙げた。

 1勝1敗で迎えた10月9日の第3戦でも、柳瀬は0対1の6回から先発・寺原隼人をリリーフし、プロ入り後、初の連投にもかかわらず、「(昨日)経験した分、楽に投げられた」と、130キロ台のフォークを武器に、2回を無安打1四球無失点。終盤の味方の逆転劇を呼び込み、2つ目の白星でチームを第2ステージに導いた。

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