「公式戦未勝利男」や「公立の星」が大活躍!ポストシーズンの“秘密兵器列伝”

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頼れる中継ぎとして

 リリーフとしてCS出場のかかったシーズン残り3試合すべての勝利に貢献したばかりでなく、CS、日本シリーズでも連日好投し、史上最大の3位からの下剋上実現のキーマンとなったのは、ロッテ・内竜也だ。

 川崎工時代に“公立の星”と注目された最速145キロ右腕は、2004年にドラフト1巡目でロッテへ。

 筆者はルーキー時代の内を取材する機会があった。駄菓子が好きだというので、「一番の好物」のスモモを持参していったことを覚えている。「プロでやるからには、中途半端なピッチャーで終わるのは嫌。球史に残る大投手になるか、全然ダメのどっちかぐらいの気持ちで勝負したい」というチャレンジャー精神溢れるコメントも印象深かった。

 2009年に31試合に登板し、3勝1セーブ6ホールドを記録したが、翌10年は敗戦処理が多く、シーズンの大半を2軍で過ごした。

 しかし、「今まで休み(2軍)が多かったから、しっかり投げないと」と一念発起し、9月28日の楽天戦、翌29日のオリックス戦で2日連続勝利投手となった。西村徳文監督が「内がいい仕事をしてくれた」と喜んだのは言うまでもない。

 さらに勝つか引き分けかでCS進出が決まる10月1日のシーズン最終戦、オリックス戦でもホールドを挙げ、日本ハムを0.5ゲーム差で逆転して3位となり、土壇場でCS出場権を得た。

 そして、CSファーストステージの西武戦、ファイナルステージのソフトバンク戦でも、内はチームの勝利に貢献し、中日との日本シリーズでも4試合7イニングを無失点、13奪三振の快投で、3ホールドを記録。頼れる中継ぎとしてチームを下剋上日本一に導き、優秀選手賞にも選出された。

思い切っていけた

 レギュラーシーズンでは本塁打ゼロだったのに、CS史上初となるプロ初本塁打を放ったのが、巨人・中山礼都だ。

 中山は中京大中京時代、中日・高橋宏斗と同期だった。2021年にドラフト3位で巨人に入団し、坂本勇人の後継遊撃手として期待された。23年に78試合に出場したが、翌年は守備面でアピールできず、8月に登録抹消されるなど、出場機会は32試合と半減した。

 だが、正二塁手として143試合にフル出場した吉川尚輝が左肋骨を痛めたため、CSでは代役としてチャンスを掴み、10月17日のDeNAとのファイナルステージ第2戦で3番に抜擢された。

 大舞台で大役を務めるプレッシャーから、第3戦まで9打数無安打4三振に終わった中山。3連敗であとがなくなった10月19日の第4戦、7回に記録したCS初安打が決勝点を呼び込み、4対1の勝利に貢献する。

「昨日のヒットがあったので、思い切っていけた」という翌20日の第5戦では、2回に右前安打を放ったあと、0対0の5回には、山崎康晃の147キロ内角高め直球を右翼席に豪快に叩き込む貴重な先制弾を放った。プロ4年目でこれが初めての本塁打だった。

 試合はそのまま巨人が1対0で逃げ切り、ヒーローになった中山も「初めて打ったのをここで出せて良かった」と最高の笑顔を見せた。

 あれから1年。今季は自己最多の103試合に出場し、打率.265、7本塁打、32打点を記録と、レギュラー級の活躍を見せた。5年目の覚醒を遂げ、CSでも下剋上Vのカギを握る一人として注目されている。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新著作は『死闘!激突!東都大学野球』(ビジネス社)。

デイリー新潮編集部

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