タレント「小堺一機」が“長寿番組”に恵まれる理由…“大将”が告げた「お前は50CCのバイクなのに60キロ出すからうるさい」という言葉の意味

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 タレントの小堺一機さん(69)は博覧強記な人である。お笑いはもちろん、映画、音楽、ファッション、美術、舞台……どんなジャンルに話が飛んでも、豊富な話題や知識をわかりやすく解説してくれる。相当な努力を積み重ねてきたのですか……と聞いてみると、小堺さんのお気に入りだという、任天堂の故・岩田聡社長の名言を教えてくれた。

「自分はそんなに頑張っているつもりはないのに、周りがほめてくれる仕事があなたの天職です」

「努力って、自分で思ったり、言ったりすることではないと思うんです。それは他人が言うことですよ。『小堺君は、本当に努力してますね』と言われて、え? これって努力なんですかね……と思うぐらいがちょうどいいんです」(小堺さん)

 まさに天職に巡り合った小堺さんだが、第1回で紹介した堺正章さん(79)、萩本欽一さん(84)のほかにもう一人、「師匠」と呼ぶ影響を受けた俳優がいる。(全2回の第2回)

勝新太郎さんの教え

「今の若い監督は、てめえが女に惚れたりいい恋愛をしていないから、逢引とか口説くシーンを撮るのがヘタなんだよ」

 俳優の故・勝新太郎さんが主宰していた「勝アカデミー」で小堺さんは勝さんから、こう教えられたという。

「男が女を口説くとするだろ。その時に、男の顔ばっか撮る監督がいるんだよ。そうじゃない。男の肩越しに女の顔を撮ればいいんだよ。嬉しそうか、困っているか、それを見ればわかるだろう。男の顔なんか撮ったってしょうがねえや」

「腹が減った芝居をするなら1週間、飯を食わなきゃいいんだ。1週間が長ければ3日でいい。あとは出てきたものを食べればいいんだ。ヘタな役者っていうのは、1週間飯を抜いて、スタジオで腹が減った芝居を“足す”ヤツだ。口元をぬぐったり、食べ物をこぼしそうになったり……そういうのは意地汚い役者のやることだ」

 そういえば、「座頭市」でおにぎりと沢庵や、お茶漬けを頬張る勝さんのシーンは今見ても、本当に美味しそうである(ちなみに、小堺さんは勝さんのセリフを振り返るとき、すべて完璧にものまねしていた)。

「勝さんの下で過ごした時間は本当に貴重でした。勝さんから頂いた数々の言葉を、大将(注・萩本欽一さん)が図書館の司書のように分類してくれた……僕の基礎はそこにあると思いますね」

 萩本さんと仕事をして間もないころ、小堺さんはこう言われたという。

「お前は50CCのバイクなのに、60キロ出すからうるさい。3000CCのベンツなら60キロ出しても、静かで気持ちいいよ~。お前は50CCのくせに、うるさいんだよ」(注・これもものまねで再現)

「僕の芸風についてです。人のセリフをよく聞きなさい、ということです。変な役作りなんか必要ない。相手のセリフを聞いているうちに自分のセリフも変わってくるから――大将はそう教えてくれました。実は、同じことを勝さんにも言われているんです。“セリフは自分が言うんじゃない。言わせてもらっているんだよ”と」

 さらに堺さんにも、同じ指摘をされたという。1984年10月から始まった「ライオンのいただきます(後に「ライオンのごきげんよう」*以下「ごきげんよう」)」(フジテレビ系)は当初、視聴率的に苦戦を強いられた。

「ゲストの資料を読み込み、入念に準備して放送に臨んでいました。でも、どうも数字が上向かない。開始から3か月くらいたったころ、関根勤さん(72)から、『堺さんが言ってたよ。“なんで小堺君は一人でしゃべっているんだろう”って』と聞いたんです。準備をするのはよかったんですが、スタジオでは僕がずっと喋っていたんですね。ちゃんとゲストの話を聞かないのがいけなかったんです」

 スタイルをかえると人気は急上昇。32年間も続く長寿番組になった。勝さん、萩本さん、堺さん……それぞれ芸を極めた人たちからの教えが、今日の小堺さんを支えている。

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