餃子の王将・社長射殺事件の公判は“異例”ずくめ ヒットマンは沈黙を貫き「首謀者に迫れるとは思えない」
右手に携帯電話を握りしめ、路上に倒れた男性。胸と腹に4発の銃弾を受けていたが出血は目立たない。第一発見者は銃傷に気付かず、心筋梗塞を疑って心臓マッサージをしたほどだ。だが銃弾はすべて急所に命中していて、男性はほぼ即死だった……。
2013年12月19日の早朝に起きた「餃子の王将」社長射殺事件。王将フードサービスの大東(おおひがし)隆行社長(72)=当時=が犠牲になった理由がはっきりしない状況で、11月26日、京都地裁で“ヒットマン”の初公判が開かれることが決まった。
事件から12年の時を経て法廷に立つのは特定危険指定暴力団・工藤会系組幹部の田中幸雄被告(58)で、
「22年10月、京都府警が、別件で懲役10年の判決を受け福岡刑務所で服役中の身だった田中を殺人の疑いなどで逮捕。のちに京都地検が起訴しました」
と、社会部デスク。
「昨年2月から長期にわたり、裁判官と検察側、弁護側が争点などを絞り込む公判前整理手続きを行ってきました。結果、“犯人性”が争点となります。つまり、田中が真犯人か否か、これをメインに審理するのです。肝心の首謀者や共犯者に迫れるとは思えません」
背景も動機も曖昧なまま。世間を震撼(しんかん)させた事件の法廷は、異例ずくめの様相なのである。
「差し控えます」
京都府警のOBが渋面で語る。
「大東さんと田中被告の二人に面識はなく、明確な接点も確認されませんでした。取調べに対し、田中被告は黙秘。雑談以外は“差し控えます”としか言わず、動機は不明です。現場に落ちていた煙草の吸殻のDNAや防カメ映像などの間接証拠を積み重ね、田中被告が実行犯だと立証できる可能性は高い。しかしながら、犯行を指示した人物の特定は難しいでしょう」
それには特異な事情が絡み合っているといい、
「かつての工藤会という組織と王将社内の問題です。まず、工藤会は一般市民を襲撃する事件を繰り返し、日本で最も凶暴な暴力団とされていた。田中はその二次団体、石田組のナンバー3であり、組織のためなら自らの犠牲を厭わない人物として信頼されると同時に、組織内でプロのヒットマンとして知られていました」
過去の事件の取調べにも何も語っていないそうで、
「それだけの人物を捜査当局に売れば組織内でどうなるか……。工藤会関係者からは、有益な情報はほとんど得られませんでした」
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