ファストファッション全盛でハイブランドはどうなるか アパレル大手「三陽商会」社長が“物価高”でも「出番が増える」と語る理由
コロナの“劇薬効果”
そんな赤字体質だった三陽商会に“大ナタ”をふるったのが大江社長だった。徹底した業務効率化を図り、コロナ禍を経て黒字転換を成功させた。
「コロナで店舗が休業になり、売上そのものが消滅してしまった。そのため、再生プランで設定した2年間で黒字化という目標も未達に終わりました。けれど、コロナという緊急事態には一種の「劇薬効果」があった。システム刷新には現場からある程度抵抗がありましたが、売上の消滅を前に、“もうやらざるを得ない”と逆に構造改革が加速されたという側面もあります。結果として、就任3年目にして黒字化を達成しました」
しかし、赤字体質とコロナ禍を乗り越えた今、待ち構えるのは物価高だ。被服費を節約するため、ファストファッションブランドやコンビニで衣類を買って済ます例も若者を中心に増えている。
アッパーミドル(上位中間層)を狙う三陽商会としては、ファストファッションブランドの隆盛は不利なように思えるが、大江社長は消費者の動向をこう語る。
「百貨店を見ていても、従来の富裕層に加えて最近は可処分所得が高く嗜好性を持った若いエントリーユーザーが増えています。ラグジュアリーブランドが価格高騰で苦しむ今、高級品と遜色ない商品を手ごろな値段で購入したいという層の拡大に伴って、我々の出番が増えてくるのではないかと思っています。やはり若い世代の方が多様な嗜好を持っていまして、徹底的に安いものを買いたいという需要もあれば、高くてもきちんとしたものを買いたいという需要もある」
いわゆる「メリハリ消費」にこそ、勝機があるというわけだ。
有料記事【ファストファッションとどう戦う? 「三陽商会」を立て直した敏腕社長が明かすアパレル“冬の時代”を生き抜く術】では、経済アナリスト森永康平氏による大江社長への直撃を通して、黒字化に至るまでの紆余曲折や、物価高やファストファッション全盛の時代に対する戦略、そして大江社長の経営哲学などについて詳述している。
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