江口寿史氏「トレース騒動」に欠けている視点とは 「写真をなぞるだけなら誰でもできる」が誤りと言える理由

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江口氏の業績を否定するべきではない

 いずれにしても、江口氏が写真の女性の許可を得ずに、トレースを行い、イラストを制作したことは、本人が語っているように事実なのだろう。しかし、トレースを行ったからといって、江口氏に「画力がない」「トレーサー」などと揶揄するのは慎むべきだし、それは間違いだということだ。江口氏に対する誹謗中傷、名誉棄損につながる恐れもある。

 江口氏は極めて画力が高いし、線の一本一本に個性がある。何より、誰が見ても“江口寿史風”とわかる絵柄を確立しているし、現代美術の分野でも江口氏の影響を受けたアーティストも数多い。また、トレースは決して悪いことでもないし、創造性のない行為でもない。繰り返すが、江口氏は許可を得ていれば何ら問題がなかったわけで、業績が否定されるべきではないと思う。ここは強調しておきたい。

 今回の騒動を受けて、江口氏が改めてどのようなコメントを発表するのか。対応に注目が集まっている。

ライター・山内貴範

デイリー新潮編集部

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