慶應薬学部からアフリカ放浪、そして漢方へ… 「Beauty Japan」に挑む34歳女性の半生
放浪中に出会った「四柱推命学」
病気を予防する道に、と考えたのは良かったが、その先は何も決まっていなかった。
「今思えば、何に全力投球したらいいのかということが見つかっていない焦りもあったと思うんです。独立心が芽生え、自分の裁量でやっていくのがいいとは分かったのですが」
悩んだ挙げ句、2019年7月の退職後、2カ月ほど、アフリカのルワンダ、マラウイ2つの国にホームステイに出掛けた。目的もあいまいだったが「自分の視野や価値観を広げよう」とボランティア活動に勤しみ、マラウイでは現地の青年海外協力隊とともに病院を訪問。「やはり自分は医療に興味があることが確認できた」という。
「元気でいるのがいいことだし、生きてこそいろんなことができる。やっぱり医療は大事なんだなと改めて感じました」
帰国後、医療関係のベンチャー企業に就職したものの、病院経営のサポート的な業務が多く、自身のやりたかったこととの差を感じすぐに退職。その後、近畿地方を“放浪”していたところ、大阪の寺院で「四柱推命学」に出会う。初めて触れる東洋思想で、陰陽五行における、「人間は生まれた瞬間の自然のエネルギーを持つ」という考え方を興味深く感じた。
「それまでの、薬を飲めばいいという西洋医学の考え方とは全く違うものでした。人間も自然の一部である以上、陰陽と木・火・土・金・水の五つの要素の調和を健康の基盤としていけばいい。それを医学にしたものが漢方であり東洋医学。面白いと思って興味を持ち始めました。実は大学の時にも少しだけ漢方の講義がありましたが、当時は『胡散臭い』と考えていたんですよね(苦笑)」
漢方相談薬局に飛び込んで様々な話を聞いた。具合が悪そうにやってきた人が、元気になっていく姿を目の当たりにした。製薬会社の営業職時代には、面と向かって感謝の言葉を言われる機会などなかったが、ここでは患者が「ありがとう」と薬剤師に告げる姿を何度も見た。
「人が健康になっていく姿を見られるなら、それをずっとやりたいと思いました。中国で長い歴史を持つ漢方や東洋思想は奥が深いんです。学生時代に胡散臭いと思っていたものが、しっかり学んでみると、よくぞここまで体系立てられているな、すごいなと思えました」
興味を持った分野には全力投球できる性格が奏功し、周囲の手助けも借りながら、漢方への道を突き進んだ。
「漢方ですべてが治ればいいというものでもなく、西洋医学を否定する気も毛頭ありません。ただ、ニッチな業界ではあるものの、患者さんの選択肢としても絶対必要だなと感じ、漢方相談薬局を辞め、2024年の4月に自分の店を開いたのです」
東京都目黒区で開業したのは、「漢方と分子栄養学のカウンセリングサロン well2 Lab (ウェルツーラボ)」。薬剤師に加え、臨床分子栄養医学研究会の認定カウンセラーの資格も取得した白井さんは、開業からの1年余りで多くの患者を診てきた。カウンセリングに1時間から1時間半の時間を割き、生活習慣病や、PMS(月経前症候群)、胃腸のトラブルなど、幅広い疾患を読み解く。最終的には患者が自立して健康になっていくことが願いだ。
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