なぜカズレーザーは嫌われないのか 結婚後もブレない「マイペースな生き方」に現代人が惹かれる理由

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金や安定に執着せず

 このような彼の姿勢は学生時代から一貫している。お金や安定に執着せず、興味のあることだけに時間を費やし、家賃が払えなくなれば大学の部室に泊まったりしていた。芸人としての下積み時代も「ウケないのは実力不足」と冷静に受け止め、必要以上に悩まなかった。彼の根底には「人生なんてなりゆき」「自分がいなくても世界は回る」という達観がある。それが自己肯定感の高さと執着のなさにつながり、結果的にブレのないキャラクターを築き上げている。

 マイペースであることは、現代社会ではとりわけ大きな価値を持つ。常にSNSなどでの評価にさらされ、他人の目を意識して振る舞うことが当たり前になっている時代において、自分のペースを崩さずに生きる姿勢は、多くの人にとって憧れでもあり救いでもある。

 周囲の空気を読みすぎて疲弊する人が多いからこそ、「他人を気にせず自由に行動しても構わない」という彼の生き方は、見ている人に安心感を与える。彼は無理に逆張りをしているわけではなく、ただ自然体でいるだけだ。それが結果として「新しい時代のロールモデル」のように映っているのだろう。

 彼の結婚に対するスタンスも、その価値観の延長線上にある。世間は私生活の変化を期待し、話題にしたがるが、彼自身はあくまで1つの出来事として受け止めている。有名な女優との結婚であっても特別視せずに、人生の一部として淡々と処理する姿勢が彼らしいとも言える。その態度こそ、今の社会に必要な「マイペースで生きる勇気」を体現している。カズレーザーはこれからも、知識と笑い、そして変わらない自由さを武器にして活躍を続けるだろう。

ラリー遠田(らりー・とおだ)
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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