粗品が唯一、毒舌を封印する相手 ブラマヨ吉田の「格」を再認識させる新番組の価値

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リスペクト

 粗品は若手の中でも突出した存在感を持っている芸人である。挑発的で生意気なキャラクターは、彼の魅力の1つでもある。しかし、吉田と向き合うとき、粗品はその態度を和らげて、リスペクトの感情をにじませる。視聴者にとっては「粗品がここまで気を使う相手なのか」という意外性があり、同時に「やはり吉田は特別な芸人なのだ」と再認識させられる。つまり、粗品の姿勢を通じて吉田の価値が改めて照らし出される構図が生まれるのだ。

 吉田が「M-1」で優勝したのは2005年のことだ。今の若い世代にとっては、リアルタイムで体験していない過去の出来事である。彼らにとって吉田の実力や存在感は未知数の部分があり、この番組を通じて初めてそこに触れることになるだろう。

 一方の粗品は令和を代表する若手芸人であり、Z世代の視聴者から圧倒的な支持を得ている。この両者が同じテーブルにつくことで、幅広い世代の視聴者に訴求できる構造が完成する。過去と現在をつなぎ、ベテランと若手の魅力を同時に引き出す座組は、テレビ界において貴重なものである。

「吉田と粗品と」は、人気芸人2人が共演する単なるトーク番組ではない。吉田にとっては自身の存在感を新たに世に示す機会であり、粗品にとっては「尊敬を示せる相手」と向き合うことで自らの評価を高める場となる。双方が互いを引き立てることで、それぞれにとって意義のある番組になるはずだ。

ラリー遠田(らりー・とおだ)
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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