なぜ?野村宏伸がトンテキを焼いている…還暦で厨房に立つ日々 「飲食店の難しさ」と「人とつながる喜び」を語る
映画『メイン・テーマ』(1984年)で薬師丸ひろ子の相手役を応募者23,000人超のオーディションで射止め、俳優デビュー。ドラマ『教師びんびん物語』(1988年)の榎本英樹役で大ブレイク。今年でデビュー40周年を迎える野村宏伸(60)が、なぜか自らトンテキを焼いて客をもてなしていると聞き、東京・高田馬場にある居酒屋、『家庭料理 ひさご』に向かった。
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【写真16枚】ファイヤー!汗だくでトンテキを熱く調理する野村ほか、ファン歴40年男性とお宝グッズを持ったツーショットも
「いらっしゃい」
キッチンから笑顔で迎えてくれたのは、野村宏伸その人だ。
「“本当にいるんだ”“本当に焼いているんだ”って、よく言われます(笑)。今年の2月から、月曜から土曜の昼にほぼ毎日、キッチンに入っていますよ。もちろん、撮影でお店に行けないときもありますが。もうガチで全身、油まみれ。今年の夏は暑かったでしょ? トンテキはまず強火で焼くから本当に熱いし、暑いんです。フライパンから脂がパーンって飛ぶこともあるから、腕にヤケドもよくしますしね」
と、名誉の負傷(やけど跡)を見せてくれた。
野村が煙に包まれながら焼いてくれたトンテキの表面はカリカリで、厚みは3cm以上。なのに、じゅわっと柔らかく、甘辛いソースが天才的にマッチ。脂身は甘く、頂に乗せられた青森産ニンニクのチップが2口目、3口目をぐいぐいと誘う。ランチ価格で、税別1,800円。サラリーマンには少し高嶺の花のお値段設定ではあるが……。
そもそも、誰もが知るベテラン俳優が、なぜトンテキを焼いているのだろうか。
人気店の味に惚れ込んで……
「きっかけは、友達に連れられてこの店に飲みに来たこと。それまで馬場なんてほとんど来たことなかったけど。ママさんがご高齢でね、“お店を引き継がない?”と誘ってくれた。それで、僕と友達で共同経営することになって」(野村、以下同)
飲食事業に興味を持っていたとは意外だ。
「うーん。漠然とやってみたい気持ちはあったけど、でも“1から始めるのは大変”と思っていたかな。やっぱり店舗を借りるところ始まり、すべてを自分で揃えなきゃいけないから。でも、このお店はある意味、居抜き物件。すべてがあったから、いいなって(笑)」
プライベートでは、2015年に再婚、妻と9歳の娘と暮らしている野村。そもそも調理経験はあったのだろうか。
「家でもお肉を焼いたり、炒めるとかは結構やっていて。包丁で食材をカットするのも好きだし……パスタやカレー、麻婆豆腐なんかは家族にもよく作っています。カレーや麻婆豆腐は、スパイスから調合したりしてね(笑)」
意外にも本格派だ。引き継ぐまで、『ひさご』は夜のみ営業の居酒屋だったが、同じ賃料を払うなら、昼もお店を開けなければもったいない。ランチ営業を始めるにあたり、何を提供するかと考えた末に行きついたのがトンテキだった。
「ハンバーグなどは、仕込みからちゃんと作らないと看板料理として完成しないから、シンプルに“肉を焼く”メニューがいいなと思っていた。そんな中で東京・浅草橋の人気洋食店『グラシア』を知りました。昨年末にお店に伺ってみると、トンテキが絶品で。すぐにグラシアさんにお願いして、作り方を習いに行かせていただきました」
野村の行動は早かった。最終的にはグラシアのマスターの前で自らトンテキを焼き、見事“免許皆伝”と相成った。秘伝のソースとこだわりの豚肉は、都度わけてもらえることに。
「おかげさまで、僕はキッチンに立ち始めた。それをSNSで発信したところ、テレビ取材が何件もあって。往年のファンがたくさん来てくれるようになりました。北は北海道から南は九州、中国など海外からも。世代はさまざまで、男性ファンも多い。親子で来てくださる方もいましたね」
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